パパの子育てにはまだ「ロールモデル不在」。多様なパパがそれぞれの形で子育てをしていました。さらにコロナ禍での環境変化により、家族との関わり方も働き方も変貌しています。企業にとって未知数な部分も多いパパの行動や気持ちを知ることは、これからのマーケティングにおいて欠かせないポイントです。
この連載では、パパラボが実施した「パパの生態変化~コロナを経たパパと家族の子育て実態~」の調査結果をもとに、第1回、第2回と、結果から読み解くパパの意識、行動変化、7つのクラスターとその特徴を紹介してきました。そこから得られた知見をもとに、この第3回では、「パパの変化とこれからの家族消費」について考察を進めてみたいと思います。
【パパラボ】
「パパって、日本のポテンシャル」
パパラボはメンバー全員が、働くパパ。営業、ストラテジー、クリエーティブ、デジタル、メディア、コーポレート、さまざまな領域のプロフェッショナルが集ったいわばパパ専門のミニエージェンシー。パパと家族のターゲット研究を起点に、マーケティング支援・コンテンツ開発・男性育休取得推進支援などのソリューションを提供。2019年パパのインタビューから「多様なパパの生態研究」を公開。
https://www.projects.dentsu.jp/papalabo/variety/
家族向けの商材・サービスで、パパ主導の購入が増えている
パパラボの調査より、コロナ禍をきっかけに、働き方が変わり、それに伴って生活時間を再配分しているパパが多いことが分かっています。オフィスワーカーを中心に、在宅勤務やリモートワークなど、働き方の選択肢が増え、仕事での会食も減ったことから、パパの在宅時間が増えているようです。その結果、子どもと過ごす時間が増えた、家族関係が良くなった、というポジティブな変化を挙げるパパが多く見受けられます。
こうした変化の裏には、これまで仕事や移動、会食に使っていた時間が、家族との時間に振り替えられていることがあるのではないでしょうか。そしてその変化は、パパが家族のことを考える時間の増加につながり、結果として、「家族そろっての行動」「家族向け商材・サービスの購入」に対するパパの関与度が、以前よりも高まっているように感じます。
パパラボの調査では、従来、ママによる銘柄決定が多かった家庭用品や家電製品といったジャンルでも、銘柄選定に関わるパパ、自分主導で購入する商品やサービスを決めるパパが増えていることが分かっています。これからの家族向け商材・サービスを考えるにあたって、こうしたパパの変化は無視できないものになりつつあるのではないか、と私たちは考えています。
「パパとしての自分に自信を持ちたい」「家族に喜んでもらえるパパになりたい」という気持ちに応える
私たちがはじめに注目したのは、家族との関係が良くなり、生活満足度が上がっているパパでも、家事育児や仕事のストレスが増えたと答える人が多く存在するという事実です。私たちは、この背景にパパの承認欲求が関係しているのではないかと考えています。家族との時間が増えることで、「よりパパとしての自分に自信を持ちたい」「家族に喜んでもらえるパパになりたい」と考える機会が増え、そのことがかえってプレッシャーやストレスにつながっているのではないかという仮説です。調査結果を見ると、こうした彼らの「パパとしての自分に自信を持ちたい」という気持ちは、承認欲求の高いクラスターに多く見られ、この仮説を裏付ける結果となっています。
出典:電通「d-campX調査」×ビデオリサーチ「ACR/ex」 パパ:20~59歳中学生以下の子どもがいる親(N=690ss)
この事実を踏まえ、承認欲求の高いパパたちへのアプローチでは、「ママ目線でのうれしいポイント」や「子ども目線での楽しいポイント」を実際の声という形で取り上げる、また、「第3者からの推奨(インフルエンサーが紹介する家族のウォンツに応える商材・サービス)」として見せていくといった、パパの外側からアプローチする、外的な動機付けが有効だと考えます。自分以外の視点から見たリアリティある評価を知ってもらうことで、その商材やサービスにお墨付きを与え、「自信を持って購入できる安心感」を生むことが、購入意思決定へとつながる大きなキーです。
「自らが率先して、家族との時間を楽しむ」「自分が旗振り役となって、家族みんなの生活満足度を高めたい」という価値観に応える
他方、暮らしや働き方の変化、生活時間の再配分によって、家事育児や仕事のストレスが減り、さらには生活満足度も上がっていくといった、正のスパイラルにあるパパも少なからず存在することが分かっています。彼らの生活価値観を見てみると、withコロナの生活であっても、「自らが率先して、家族との時間を楽しみたい」「自分が旗振り役となって、よりよい暮らしを目指し、家族みんなの生活満足度を高めたい」という前向きな気持ちがあるようです。
こうしたパパたちは、家族向け商材・サービスの選択において、「家族でどんな体験ができるか、いい経験を得られるかどうかを重視したい」「価格にはこだわらず、機能価値や情緒価値、満足感が長く続くかどうかで決めたい」という意識を持っています。だからこそ彼らには、「暮らしを楽しむ視点でインスピレーションが得られる情報」や「デザイン価値や品質価値を信じられるストーリー」を提供し、自身に気付きや発見を促す、使ってみたい、試してみたいという気持ちを掻き立てるなど、内的な動機付けにつながるアプローチが有効です。新しい商品やサービスを取り入れ、そのことをきっかけに、家族がよりよい暮らし、時間を過ごすようになる、そんなイメージを持ってもらうことが重要です。
これからの家族に必要なのは、「よりよい時間を過ごすためのソリューション」「時間・空間を楽しく、心地よくするための体験価値提案」という視点
コロナ禍をきっかけに、働き方の選択肢が増えたこと、可処分時間に余裕ができたことで、パパが家族と過ごす時間が増えています。こうした変化が、「パパとしての自分」「家族との時間」「日々の暮らし」をよりよいものにしていきたい、そんな気持ちを以前よりも大きくしているのではないでしょうか。この傾向は一過性のトレンドではなく、新しい価値観として根付いてきており、afterコロナの社会を考える上でも重要な視点になると考えます。
今回の調査を通じて、これからの家族向け商材・サービスにおける課題は、いかに「家族がよりよい時間を過ごすためのソリューション」になるか、「家族そろっての時間、空間を楽しく、心地よくするための体験」を提供するか、という2点に収斂されていく、そう私たちは考えています。
【調査概要】
■電通「d-campX」
調査手法:回答専用タブレットを用いたインターネット調査
調査地区:東京50㎞圏
調査時期:2021年3月、6月
対象者:20~59歳既婚男性 かつ 中学生以下の子どもと同居の方
サンプル数:690ss
■ビデオリサーチ「ACR/ex」
調査手法:回答専用タブレットを用いたインターネット調査
調査地区:東京50㎞圏
調査時期:2021年4〜6月
対象者:20~59歳既婚男性 かつ 中学生以下の子どもと同居の方
サンプル数:690ss
ACR/ex詳細内容はこちら
■電通パパラボ×ビデオリサーチ「ACR/ex」connect調査
調査手法:回答専用タブレットを用いたインターネット調査
調査地区:東京50㎞圏
調査時期:2021年11月
対象者:20~59歳既婚男性 かつ 中学生以下の子どもと同居の方
サンプル数:647ss
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パパの変化が、これからの家族消費を読み解くキーになる。 | ウェブ電通報 - 電通報
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