ロシアのウクライナ侵攻で、ロシア軍の残虐行為を戦争犯罪として国際法廷で裁きにかけるための動きが、早くも本格化しています。その背景に、戦争のあり方の根本的な変化があると指摘する古谷修一・早稲田大学教授(国際法)に聞きました。
――ウクライナでロシア軍が繰り広げた残虐行為に対して、その刑事責任を国際刑事裁判所(ICC)などの国際法廷で問う動きが出ています。
今回の特徴は、ICCが非常に素早く動いたことです。カリム・カーン主任検察官は、侵攻4日後の2月28日に捜査の手続きを始めると表明しました。こんな例は過去にありません。第2次大戦での東京裁判やニュルンベルク裁判は、戦争が終わってから始まりました。旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所は戦争中の1993年設置ですが、内戦が始まって2年以上後です。
――4月初めまでに首都キーウ周辺からロシア軍が撤退して、郊外のブチャでの虐殺の実態が明らかになりましたが、その前からすでに「戦争犯罪」が問われていたということですね。
第2次大戦を例に考えると、『日本が侵略した』という事実が、侵略された側にとっても、米英にとっても、何より重要でした。そこで殺された人々については、侵略行為の結果に過ぎないと受け止められたのです。でも、今回はむしろ、国家間の責任としての侵略行為そのものが問われるより、その侵略によって人々が殺されたことに対する責任が、初期の段階から問われました。
よみがえったナチスの記憶
つまり、「人権」を主体として、戦争のあり方が決められているのです。欧州の人々がこれほどウクライナの立場を支持する理由も、ここにあります。現在は核戦争の可能性も否定できない極めて危険な状況にあるのですから、冷たい言い方をすると、「ロシアに妥協しなければ」との考えが欧米で台頭してもおかしくはありません。でも、ロシア軍の行為を容認できない世論が、それを許しません。
――「国家の戦争」から「人間の戦争」への変化ですか。なぜそうなったのでしょうか。
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「国家の戦争」から「個人の戦争」へ プーチン氏は変化を見落とした:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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