言葉も文化も違う外国ルーツの子どもには、日本の学校で勉強し、進学や就職をめざすのは大きな挑戦です。社会からドロップアウトする子もいる中で、それをどう防ぎ、可能性を引き出せるのか――。
「この子たち放置していいんですか」
ブラジル人の少年らが校内をバイクで走り、階段で音楽をかけて踊る。多文化共生の先進地として知られる岐阜県可児市。かつて外国人の子どもの多くは放置され、荒れていた。
変化を起こしたのは、現場にこだわる一人の研究者と、ちょっと型破りな中学校長だった。
「この子たちを放置してもいいんですか」
2004年、可児市立蘇南中学を訪れ、校長に詰め寄った女性がいた。東京外国語大准教授の小島祥美さん(49)で、当時は大阪大の院生だった。
「学校の大変さも知らずに」
校長の林伍彦(くみひこ)さん(78)は言い返した。その年、校長に赴任したばかりだった。
外国人の全世帯を訪問調査
小島さんは、03年から可児市で外国人の子どもがいる全世帯を訪問する就学実態調査をしていた。
学校に通っていない外国人の子どもたちがいる。小島さんが、それを目の当たりにしたのは、1995年に起きた阪神淡路大震災の被災地だった。ボランティアで訪れた神戸市内のアパートで、平日の昼間なのに小学生くらいの子どもらが部屋にこもり、幼いきょうだいの面倒を見ていた。
日本で外国人は義務教育の対象になっていない。このため、外国籍の子の不就学について各教育委員会なども実態を把握していなかった。
小島さんは、まずは調査をしようと各自治体にかけあったが相手にされなかった。そんな中で、応じたのが可児市だった。
名古屋への通勤圏内で大型工業団地もある可児市は、1990年代から自動車部品工場などで働く日系ブラジル人を中心に外国人が増えた。外国籍住民は現在約8千人で、多い地域では全体の20%を超える。
調査は可児市や関係機関と共同で行い、2年にわたり約300人を対象に調べた。その結果、約7%が不就学で、不明を含むと3割を超えていた。中学生の年齢で働いている子も多かった。
この現実を放っておけなかった小島さんは蘇南中を訪れ、校長の林さんにまくし立てた。
この子たちを高校へ行かせよう
学校のことを分かってから語れ。そんなふうに言い返された小島さんは、それから毎日、蘇南中に通い、朝から夕方まで教室の後ろに立った。林さんはそれを受け入れた。
林さんも、外国人の子どもたちを何とかしたいという思いはあった。
日本語を教えるクラスはあっ…
ドロップアウトする外国人の生徒 変化起こした研究者と型破り校長:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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