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Saturday, May 6, 2023

節句の祝い方に変化 従来の「男らしさ」「女らしさ」にとらわれず:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 5月5日は、男児の成長を祝うとされる端午の節句。ジェンダーに対する考え方が多様化する中で、3月3日のひな祭りとともに、祝い方に変化が生まれている。伝統行事を楽しみながらも、従来の「男らしさ」「女らしさ」にとらわれない価値観が広がっている。

「強さ」から「賢さ」へ

 「『強さ』から『賢さ』へ」。東京・日本橋の人形店「ふらここ」が昨年11月から今年1月にかけ、五月人形を購入した顧客へのアンケートを分析したところ、そんな傾向が明らかになった。

 ふらここでは、「素直にまっすぐ」「強くたくましく」など、親が子に託す八つの願いをテーマに人形を作っている。今シーズンに最も多くの客が選んだのは、「物事のことわりを大切にする、聡明(そうめい)な子に」という願いだった。

 「新型コロナウクライナ情勢など、変化が激しい時代。物事の本質を探究できる賢い子に育ってほしいという気持ちが強くなっているのでは」と原英洋社長(60)は分析する。

 賢さの象徴として、帳面と筆を持った人形を発表すると、売れ行きがよかったという。

 大阪市中央区の老舗人形店「久宝堂」では、従来の雄々しいイメージとはかけ離れた印象のかぶとを販売している。ピンクや紫などのパステルカラーを使い、木工も採り入れたオリジナルブランド「イロドリ兜(かぶと)」だ。

 インテリアになじむことを重視し、高さ約15センチとコンパクト。取締役の又吉康太郎さん(31)は、「かぶとなんていらないという世代への新しい提案です」と語る。

女びなのペアも

 男女のペアが当たり前だったひな人形にも変化がある。

 さいたま市岩槻区の「鈴木人形」では昨シーズンから、ひな人形を同性のペアでも販売するようになった。

 きっかけは、「女びな同士で売ってもらえないか」という女性カップルからの問い合わせだった。里子を受け入れることになり、「母親が2人」のひな人形を見せたいという。

 鈴木章人社長が「節句を楽しんでもらうことが何よりの喜び。古い枠にとらわれるべきではない」と考えて快諾すると、2人は「何軒も断られていました」と喜んだ。

 評判が口コミで広がると、今シーズンは男びな同士も含め、10組ほどが売れたという。

 名古屋市中区の老舗「大西人形本店」では、男の子だけれどおひな様が好きだと買い求める例があった。同店の大西嘉彦さん(41)は、「きれいなものを愛することや、人形に願いを込めることに男女の別はない。ジェンダー平等や多様性への意識が高まる中、自分が好きだと思える人形をそばに置いてほしい」と話す。

周囲が決めつけず

 「女の子になりたい」

 男児として生まれた福岡県の小1の子どもが激しく泣いて訴えたのは、幼稚園の年中のころだった。2歳のころから女の子向けのかわいいものが好きだった。

 30代の母親は、「やっぱり」と思ったといい、昨春のひな祭りから子どもと一緒に祝っている。

 弟たちのためには、端午の節句にかぶとやこいのぼり、かしわ餅を用意する。「伝統行事の由来や楽しさを教えたい」と考える一方で、「女の子だからひな祭りなどと周囲が決めず、子どもに柔軟に選ばせてあげたらいい」と思う。

 幼稚園では性自認についての理解が得られず、登園前に女児用の下着から男児用にはき替えた。

 小学校ではありのままを受け入れてもらったといい、今秋の七五三は女の子用の着物で祝う予定だ。

 節句への思いを朝日新聞がSNSで読者とつながる「#ニュース4U」で募ると、「男は勇ましくあれ、との固定的な価値観につながるのでは」「5月5日は武者人形にこだわらず、すべての子どものお祝いの日に」など、さまざまな声が寄せられた。

 東京都の北村佳代子さんは2体の女びなをいつもリビングに飾っている。2人の娘が気に入って購入したもので、「我が家のキャラクター的存在です」。

 かつて次女はこいのぼりにあこがれたが、「あれは男の子の家に飾るんだよ」と買わなかった。「性別を気にする必要はなかったのかもしれない」と思う。

4月4日に「あんたの節句」

 関西地方の非正規公務員(50)は、女性にも男性にも当てはまらない「ノンバイナリー」を自認する。幼いころからスカートに違和感があり、赤いランドセルも早々に使うのをやめた。

 家では桃の節句を祝ったが、内心では「何がめでたいのか」と思っていた。

 成人後、母に性自認について話すと、桃の節句と端午の節句の間の4月4日に「あんたの節句やから」とお金を振り込んでくれた。「母と私の大切な日。優しい記憶として刻まれています」

 性の多様性が広がるなか、伝統行事では異性愛だけが前提となっていることについてあまり議論されていないのでは――。昨年のひな祭りを前に、LGBTQ当事者の保育士が中心となって結成した「にじいろ保育の会」がそんな問題提起をしたところ、「伝統行事をつぶす気か」などとネット上で批判を受けた。

 メンバーの天野諭さんは「伝統行事を否定するつもりはない」と強調しつつ、「保育現場で配慮が必要だと考える場面もある」と話す。

 例えば、紙パックに折り紙で衣装を貼る工作で、男の子の顔写真を男びなやひこ星に、女の子の顔写真を女びなや織姫に貼ったり、衣装の色が「赤と青」などと保育士側が当たり前のように決めつけてしまったりすることがあるという。

 「性別を決めつけたり、『男らしさ』『女らしさ』や異性愛の物語をことさら強調したりせず、できるだけ柔軟性を持たせた形で扱うのがいいと思います」

もともと男女に関係なく

 放送中の大河ドラマ「どうする家康」では、幼少の徳川家康が人形で遊ぶ場面が描かれた。家康が人質にとられた時代、心細さをなぐさめるために遊んだとされるひな人形は現存する。

 近世以降の伝統行事に詳しい日本史研究者の間瀬久美子さん(73)によると、節句は厄よけや厄払いをする行事で、もともと男女に関係はなかった。

 桃の節句では京都の下鴨神社鳥取市用瀬(もちがせ)町などで今も、人の形をした紙の「形代(かたしろ)」や紙びなを川などに流して厄を落とす「ひな流し」の行事があり、男女関係なく参加している。

 端午の節句では、邪気をはらうとされるショウブを用いた習慣が広がった。武家が武運を願う「尚武(しょうぶ)」から発展して、江戸時代ごろには男児の成長を願う行事として、庶民も祝うようになったという。

 間瀬さんは「伝統を大事にしつつ、こうあるべきだという押し付けではなく、時代に即して祝っていけばいい」と話す。伊木緑、机美鈴、伊藤恵里奈)

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