■長野県内の塾や学校、利用拡大〈みつめる長野県知事選〉
26日午後5時半、松本市の松本駅近くのビルの一室で、学校の授業を終えた高校生や夏休み中の小中学生計8人が、仕切りで隔てられた机に向かっていた。AI(人工知能)教材のベンチャー企業、アタマプラス(東京)が6月に開業した直営学習塾「シンクス松本駅前校」。ここでは、AIが子どもに教える独特の光景が広がっていた。
子どもたちはイヤホンでAIが提供する講義を聴いたり、問題を解いたり。塾長の他に「スタディートレーナー」と呼ぶ講師が1人いるだけで、教室は静かだ。講師は、タブレット端末で子どもたちの勉強の進捗(しんちょく)をリアルタイムで把握。行き詰まった子に歩み寄り「どこが分からないの?」と声をかけた。
AI教材は、自ら事例を学習し判断するコンピュータープログラムのAIを教育分野に応用したもの。膨大な情報「ビッグデータ」を基に子ども一人一人の理解度を見極め、弱点を克服する解説や問題を個別に提供する。
アタマプラスは、大手商社出身の稲田大輔社長が大学時代の友人と2017年に創業。AI教材を開発し、全国の学習塾や予備校などに売り込み、4月時点で県内の既存の塾を含む約3100教室が導入している。同社は今年、松本市と諏訪市に計3教室を相次いで開校。地方でのAI教材を活用した塾の効果的な運営方法を探るため、長野県に集中的に開校するという。
子どもたちの評価は上々だ。松本市内の中1の男子生徒(13)は、数学の分配法則の講義を聞いた後、問題に進んでいた。タブレット端末で答えの選択肢をタップ。「自分のペースで授業時間を決められるのがいい」。松本県ケ丘高校(松本市)3年の田口正清さん(17)=塩尻市=は、国公立大を目指して受験勉強中。「学校より早いペースで学べる。小まめに演習が出て、受け身にならない学び方が自分に合っている」と話す。
AI教材は、塾や私立学校だけでなく、県内の公立中学校や県立高校の一部でも利用が始まっている。背景には、個別の生徒に最適な学びを与えるニーズの高まりや、教員の働き方改革などがある。だがAI教材の活用は、教師と子どもが育ち合う時間をAIに委ねることに道を開く。
地域を挙げて人の育成に力を入れる教育熱があり、「教育県」と呼ばれる長野県。AIが教える時代に入った今、これからの若者をどう育むのか、教育行政に大きな権限を持つ知事の姿勢が問われる。
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