京都アニメーション放火殺人事件で殺人罪などに問われた青葉真司被告の裁判員裁判が京都地裁で結審した。検察は死刑を求刑し、弁護側は心神喪失で無罪を求めた。
重大凶悪事件である。社会不安の沈静化には事件解明の作業が不可欠だ。裁判の内容が裁判員や国民に分かりやすくなるよう、工夫がなされた。検察、弁護側の論告・弁論は2回行い、裁判官と裁判員はまず刑事責任能力について評議した。その上で量刑を判断する。判決は来年1月25日に言い渡される。
立証が多岐にわたり、被告の体調の懸念から予備日を含め32期日が指定されたが、予備日は一度も使われなかった。京都地裁の訴訟指揮を始め法曹、裁判員の努力に敬意を表したい。
全22回公判のうち実に10期日が被告人質問にあてられた。遺族も意見陳述や質問をした。「小説を京アニに盗用された」などの妄想で敵意をむき出しにしていた被告は、17回公判(11月27日)では「あまりにも浅はかだった。後悔が山ほど残る」と内省的な発言をし、21回(12月6日)には遺族の質問に「申し訳ないと思う」と初めて謝罪の言葉を口にした。
遺族感情を逆なでするような供述もあり、謝罪の弁が本心からのものか疑わしいところはあるが、変化は認められる。この裁判で大切なのは有罪か無罪かや量刑の判断だけでなく、被告に真の贖罪(しょくざい)意識を持たせることだ。罪に向き合わせ、自身が起こした結果の重大性を認識させることにほかならない。
無差別大量殺傷の側面を持つこの事件は模倣性が強い。青葉被告は平成20年の秋葉原事件に影響されたと供述している。京アニ事件の2年後には、徳島でアイドルグループのライブが開催中のビルにガソリンがまかれ火をつけられる事件が起きた。公判で被告の男は「京アニ事件をまねた」と供述した。
犯行の連鎖を断つには、身悶(もだ)えするほどの罪悪感と後悔を被告に芽生えさせ、社会に知らしめることだ。そこに司法は努力してほしい。判例とデータで量刑を決めるだけならAIで済む。人が人を裁き、諭し、更生を促す。必ずしも定量的でないからこその司法ではないか。
青葉被告に変化の兆しはある。真の贖罪意識へ、司法は決してあきらめてほしくない。<2023.12.13>
【主張】京アニ裁判結審 青葉被告の変化を本物に - 産経ニュース
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