第95回 心理の移行曲線を活用するコツ
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業務推進部の島谷課長(仮名)からの相談です。
グローバル競争はもちろん、働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進など、企業は大きな環境変化にさらされています。会社の方針・戦略を踏まえて、私たちの部署も変わらなければなりません。「急速な環境変化についていくためには、もっとスピード感を持とう!」と、私は発破を掛けるのですが、メンバーの反応は今ひとつなのです。私が話すたびに、メンバーは戸惑いを隠せない様子です。仕事をさぼるわけではなく、一生懸命やってくれています。でも、環境変化に応じてチームの意識を変えていかなければならないのは事実です。私はどのようにメンバーに伝えていけばよいでしょうか。
環境の変化により、組織・社員に求められるものが変わってきているのに、以前からのスタイル、やり方を維持し続けて、新しい事へ挑戦する姿勢を見せない部下……。このままではせっかく築いてきた知識や経験がうまく生かされずに、部下個人にとってもチームとしてもロスを出し続けることになりかねません。
しかし、人の意識は上司から言われたぐらいでそう簡単には変わりません。だからといって、上司が何もしないわけにはいきません。環境変化に応じて、チームの意識を変えていく必要があります。変化に対応しようとする意識を部下に持たせるためには、どうすればよいのでしょうか。
心理の移行曲線とは
変化に直面すると、人の心はある特定の曲線をたどります。心理の移行曲線(チェンジカーブ)は、人が大きな変化に直面したときに、その変化を受容して適応するまでの心理的な反応の過程をモデル化したものです。人は変化に直面したときには、4つのフェーズを経て変化を受容していきます。
[1]否定フェーズ
予期せぬ変化に対しての最初の反応は、自分自身を守ろうとする拒絶反応として現れます。予期しない変化を受け入れたくないと考え、実際の変化が起きていることを否定します。
[2]抵抗フェーズ
変化を現実のものとして理解し始めると、その変化に対して怒りや落ち込みを感じ始めます。変化に対する不安や恐れ、否定感が生じて、変化に抵抗しようとします。
[3]探究フェーズ
この段階では、人はその変化を拒否しがたいものとして、新しい考え方を取り入れ始めます。変化をどのように受け入れるか、どのように適応していくかを考えます。
[4]決意フェーズ
困難を乗り越えて、新たなやり方を見いだして新しい状況に適応していきます。変化や新しい環境をポジティブに捉えて、積極的に取り組み始めます。
つまり、変化に対して「否定」や「抵抗」というネガティブなフェーズを通過しなければ、変化を受け入れるポジティブなフェーズである「探求」や「決意」には到達できないということです。
「部下が変化に合わせて変わってくれない」という悩み - ITpro
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