2023-06-17 15:22社会
陸上自衛隊の射撃場で3人が小銃で撃たれ死傷した事件で、自衛官候補生の男(18)は規則に反して弾倉を装填(そうてん)し、突然周囲の隊員を銃撃した。「事故は防げても、悪意を持って撃たれれば」「安全教育が伝わらないのか」。陸自は状況を調査し、再発防止を期す考えだが、防衛省内からは若者を指導する難しさや、対策の限界を懸念する声が漏れる。
候補生の実弾射撃訓練は事件当日が4回目。候補生約70人に対し、指導役の隊員は約50人が参加し、実弾に不慣れな候補生の事故に備えて十分な体制を組んでいた。射撃中は脇に複数の隊員が付き、挙動を監視。銃や弾の取り扱いや移動は全て指導役の号令で行い、射撃位置に入る前は弾倉は外し小銃と別に置くよう指導されていた。
男は待機場所を監督する八代航佑3等陸曹(25)が止める間もなく弾を込め、菊松安親1等陸曹(52)らに発砲。陸自幹部は「暴発事故などを防ぐ体制は十分でも、味方に撃たれるとは。悪意を持った発砲は防ぎようがない」と肩を落とす。
4月の入隊後は徹底して安全教育を行う。個人に銃を初めて渡す「貸与式」は銃を扱う責任と重みを自覚させる儀式で、その後も射撃姿勢や分解整備などを学んだ上でようやく実弾射撃となる。
銃弾や部品の管理や「銃口を人に向けない」といった規則は、特に厳しく指導。ただ、入隊する若者らの気質の変化に伴い、やり方も変わっているという。教育隊経験のある隊員は「頭ごなしや懲罰的な指導はかなり減った。ハラスメントには気を使う」と話す。その上で「命に関わる武器を扱う以上、厳しくはせざるを得ない。安全は譲れない」と悩ましげに話した。
候補生の採用前には心理テストを含む適性検査も行うが、よほどの問題がなければ、結果は指導上の注意点や向く職務の把握に活用することが一般的だ。志願者が減少傾向で隊員募集に苦慮する状況も採用の難しさに拍車をかける。防衛省幹部は「隊員の質と量の確保をどう維持するかは将来の課題だ」と話し、事件でさらに希望者が減ることを心配した。
[時事通信社]
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「悪意持って撃たれると」=若者変化も、譲れぬ安全―再発防止に陸自苦慮・候補生発砲 - 時事通信ニュース
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