対応製品ついに登場。12VHPWRの現状
12VHPWRはビデオカードに最大600Wの電源を供給するコネクタだ。12VHPWRは増え過ぎたケーブルをまとめるのに役立つ。
GeForce RTX 40シリーズの登場に伴い、12VHPWRコネクタを実装するビデオカードが次々に発売された。そうした製品には、複数のPCI Express 8ピンコネクタから12VHPWRに変換するアダプタが付属しているが、変換なしでスマートに使いたいというニーズも高い。電源側のプラグインコネクタに12VHPWR端子を備えたネイティブ対応のほか、電源側のプラグインコネクタは従来のまま、12VHPWRへと変換するケーブルをバンドル、あるいは別売りする製品もある。
12VHPWRでは電源が出力可能な電力をビデオカード側に通知する4ピンの「サイドバンド信号」を用意しているが、変換ケーブルや変換アダプタではこれを利用できない。電源付属の変換ケーブル以外の場合はユーザーが自ら安全性に気を配る必要がある。
12VHPWRを安全に使うために。NVIDIAが注意を喚起
12VHPWRは流れる電流量が大きく、大電流は損失が増えやすい。損失は熱へと変換される。コネクタ端子の接触が悪かったり、ケーブルに応力がかかったりすると、その部分が発熱し、焼損して炎上することもある。実際に12VHPWRの焼損事故が報告されている。NVIDIAによれば、12VHPWRを安全に扱うためとして、コネクタを根本まで正しくはめ込み、ケーブルを強く曲げるような行為を避ける、という2点を挙げている。
パーツ構成に合わせて最適な出力を選ぼう
電源選びの基本は組み立てるシステムに適合した出力を選ぶこと。最近はデスクトップ向けのCPUやビデオカードの消費電力が増大傾向にあり、状況が従来とは少し変化したところもある。たとえばIntelのCPUならブースト動作時の目安値であるMTP(Maximum Turbo Power)の値が重要だ。AMDのCPUもRyzen 9 7950XではTDPが以前から65W増大し170Wになった。そして、最新のビデオカードでもGeForce RTX 4090のTGP(Total Graphics Power)が450W、Radeon RX7900 XTXのTBP(Total/Typical Board Power)が335Wと高まっている。ハイエンド構成ではこうした消費電力の増大が顕著なため、変換効率がよいレンジに当てはまるように使いたいならば1,000W超の電源をお勧めしたい。
ミドルレンジCPUを用いた構成では消費電力も若干抑えられるが、MTPが高めのCPUには要注意。予想以上の電力になることもある。そうした構成では出力に余裕を見たい。TDPが100WクラスのCPUにミドルレンジGPUの組み合わせなら、550 ~ 650Wといったこれまでも定番だった出力でカバーできる。そしてCPU内蔵GPUを利用するのであればさらに小出力でよい。ただし現在の小出力電源は数が少なくなっており、実質的に550Wクラスが候補になるだろう。
変換効率の指標としてより厳密なCybenetics ETAが登場
電源の変換効率の指標として長らく80PLUS認証が用いられてきた。StandardからTitaniumまで6段階のグレードは、電源を効率面から選ぶ上で役立ってきた。現在でも多くの製品はこの80PLUS認証を取得しているが、最近増えてきたのがCybeneticsによる電源の認証プログラム「ETA」を取得する電源製品だ。80PLUSとETA、Platinumグレードではどのように異なるのか表にまとめてみた。
変換効率は、数値上では似ている。ただし80PLUSは計測する負荷率が三つ指定されているのに対し、ETAではより細かな条件で計測した値の平均を採用している。これは変換効率が良好なレンジを外れたときに一気に数値が悪化するような場合を想定したものだ。また特徴的なのが、USB充電などで用いる5VSB、省エネ規格に関する待機電力など、現在の電源に求められる新たなニーズを取り込んでいるところだ。そして計測時の環境温度。ETAは実運用を考慮し、30℃という高めの温度を用いている。より厳格かつ実環境寄りと言えるだろう。こうした違いを理解しつつ比較検討の参考としたい。
[TEXT:Ta 152H-1]
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