日銀の白川方明前総裁が1日、国際通貨基金(IMF)の季刊誌に金融政策の新たな方向性に関する論文(英文)を寄稿した。3ページの簡潔な内容で、タイトルは「変化の時(Time for Change)」。日銀では4月、2期10年にわたり異次元緩和を続けた黒田東彦総裁が退任し、経済学者の植田和男氏が新総裁に就く予定。10年ぶりのトップ交代のタイミングに合わせ、前総裁は何を伝えようとしたのか。
「デフレに対する根拠なき恐怖」
「2008年、(当時英国女王だった)エリザベス2世が、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(英国の大学)の教授に、世界金融危機について尋ねたのは有名な話だ。『なぜ、誰もこの事態を予測できなかったのでしょうか?』。もしチャールズ3世が亡き母の足跡をたどっているなら、インフレ(物価上昇)について同じ質問をするに違いない」
論文は、なぜ主要国の中央銀行が記録的なインフレの発生を防げなかったのか――という素朴な疑問から始まる。
20年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気悪化を受け、各国中銀は政策金利を引き下げ、市場に大量の資金を供給する大規模な金融緩和を実施した。その後、感染拡大が収まり社会活動が再開されるにつれ、強い消費需要と供給不足によりモノやサービスの値段が急激に上がったが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「一過性のもの」と主張するなど各国中銀は見通しを誤り、金融引き締めに動くのが遅れた。
白川氏がその背景にあると見るのは、デフレ(物価下落)に対する根拠なき恐怖だ。白川氏は「インフレ発生前、先進国の中銀が強く懸念していたのは低インフレだった。彼らはインフレは一過性だと確信的に主張し、物価が急激に上昇しているのに抑制できなかった」と指摘。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻に伴う「世界的な供給網の途絶」という外部要因がインフレの引き金となったものの、「インフレの衝撃の大きさは金融環境によって異なる」と各国中銀の金融政策が影響したと分析。「セントラルバンカーに全く罪がないとは言えない」と断じた。
黒田日銀の10年 冷ややかな見方
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異次元の10年:「変化の時」 白川・前日銀総裁は寄稿で何を伝えようとしたのか - 毎日新聞
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