従業員の髪色は黒か栗色――。そんな服装ルールを設立以来50年ぶりに見直した企業がある。東海地方を中心にスーパー「アピタ」や「ピアゴ」を展開するユニーは、11月から社内ルールを緩和し、従業員の髪色の規定をなくした。「利用者に不快感を与えないか」という懸念を乗り越え、見直しを決断できたのは、なぜなのか。
「『身だしなみも時代に変化対応していくべき』だと考え、従業員1人ひとりの個性を出せるようにと社内で意見がまとまりました」(担当者)
同社は1971年創業。現在、東海をはじめ関東・北陸・近畿エリアに134店舗を展開する。2019年にディスカウント店「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の傘下に入った。
ルール緩和の背景には、親会社の動きがあった。PPIHは今年3月、髪色やネイルの色を自由化すると発表(関連記事)。一方で、グループ内でユニーだけは「客層が異なる」としてルール緩和の対象外となっていた。
「利用者に不快感を与えないか」
その後、ユニー社員から「髪の色は自由にならないのか」と意見が挙がり、改めて検討に入った。最も重視したのは「利用者に不快感を与えないか」という点だったという。
「そこで、あるルールを設けました」と担当者は話す。
それは「派手な髪色に染める場合は、お客さまに見られていること、店舗の印象につながりやすいことをより意識し、店舗で一番元気なあいさつと好印象な接客を心がける」というものだ。
「髪色の自由化を先行して実施したドン・キホーテの取り組みからも、従業員の接客が好印象であれば、髪色が自由でもお客さまに与える不快感は軽減されるのでは、という手応えがありました」(担当者)
さらに、髪色の自由化は、多様性を受けいれる企業文化を推進することになり、「新しい価値観を持った多種多様な人材の採用にもつながる」と考えたという。
関連記事
「外見より接客の中身こそ大切」
髪色の自由化に対する内外の反響は、予想を上回る大きさだったという。
社内では「接客を元気に頑張るので、派手な髪色に染めます!」と店長に伝えた従業員もいたほか、「(利用客から)その髪色良いねと言われると、今日も仕事を頑張ろうという気持ちになる」といった意見も寄せられたといい、ルール変更が従業員のモチベーションアップにつながっているとの手応えを得られたという。
利用客からも、好意的な意見がほとんどだ。一部、「これまでのユニーの印象と異なる」と否定的な意見が寄せられたこともあるが、「時代に見合っている」「ユニーに入社したい」といった前向きな意見が多いという。
担当者は「見た目や外見ではなく、接客の中身や内容こそが大切だと考えました」と説明。「従業員が1人ひとりの個性、『自分らしさ』を出して働けるような環境を整えること、従業員の自分らしい自然な接客を通して、人と人とのつながりを大事にする会社をつくってまいりたいと思います」と説明している。
近年、髪色を自由にするなど、服装ルールを緩和する企業が増えている。コーヒーチェーン大手のスターバックスは21年8月、従業員のドレスコードを変更。髪や服装の色を自由にし、デニムや一部の帽子着用も可能とした。
三井住友銀行は19年9月から、本店勤務の行員を対象に、年間を通じて自由な服装を認める取り組みを始め、話題を呼んだ。
「個性」や「自分らしさ」の尊重が社会に根付くとともに、企業の採用活動が少子化で年々難しくなる中、「選ばれる企業」を目指してルールを柔軟に変更していく企業は今後も増えそうだ。
関連記事
「派手な髪色もOK」で従業員にどんな変化が? ユニーが50年ぶりルール緩和で経験したこと - ITmedia ビジネスオンライン
Read More
No comments:
Post a Comment