「同性パートナーと家族になる法制度がないのは個人の尊厳に照らし憲法に反する状態」。同性婚裁判で東京地裁はこう述べた。性的少数者への人権配慮は大事で、国は法整備を急ぐべきだ。
戸籍の性別が同じ二人が婚姻届を役所に出しても、受理されない。民法や戸籍法にある「夫婦」という言葉が「男女」の婚姻を前提としているためだ。
同性同士のカップルが共同生活をしても、相続権や所得税の配偶者控除、共同親権など法律婚で得られる法的な権利や利益が認められない。病院でパートナーの病状説明を拒まれるケースもある。
だから、二〇一九年以降、「結婚の自由をすべての人に」をスローガンに、東京や名古屋など全国五つの地裁で裁判が起こされた。既に札幌では「違憲」、大阪では「合憲」と判断が割れていた。
注目された東京地裁は「同性愛者がさまざまな不利益を受けている」実態を認め、家族になる法制度がないことは「人格的生存への重大な脅威、障害で、憲法に反する状態」と述べた。
だが、法制度をつくるのは「立法裁量に委ねられている」として、司法の立場としては「合憲」との判断だった。
その一方で「夫婦とは男女が子を産み育て、次世代につないでいく」という伝統的価値観への理解も示した。確かに自民党などに同性婚への根強い反対論がある。そんな声に配慮した一面もうかがえる判決だった。
しかし、人権や個人の尊厳といった憲法の中核をなす価値を重んじるのは当然で、その理解を示している以上、速やかな立法措置を求めていると解される。
性的マイノリティーを公的に認める「パートナーシップ制度」を導入する自治体は既に二百四十を数える。東京都でも十一月一日から始まった。世界では約三十の国・地域が同性婚を認めてもいる。米国上院でも同性婚の権利擁護の法案を可決したばかりだ。
もはや性的マイノリティーに対する社会意識が世界的に大きく変化しているのは明らかだ。人権の観点からも同性カップルを区別する理由はなく、法的利益の面で差別するのは不当である。
「結婚の自由をすべての人に」とは当然の主張である。国会も社会の変化をとらえ、このテーマに真剣に向き合わねばならない。
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