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Saturday, October 1, 2022

引退表明の西武・十亀剣 「望まない変化」に苦しんだ日々 2日ラストマウンドへ - 西日本新聞

 今季限りで現役を引退する西武の十亀剣投手(34)が2日のレギュラーシーズン最終戦の日本ハム戦(ベルーナドーム)で最後の登板に臨む予定だ。

 「どういう結果になるか分からないですけど、もがいて、あがいて、やってきた結果をそこで出したいと思っている。最後に見てくださる方に、十亀っていう選手はこういう選手だったなと、思い出してもらえるきっかけにしてもらえたらいいなと思います」

 プロ11年目でグラブを置く決断を下した。横手投げから150キロを超える真っすぐなどを武器に、2012年のルーキー年から活躍。15年には自己最多の11勝をマークした。ところが近年は、股関節の故障に端を発した、望まない変化に苦しんだ日々だった。

 「股関節を一度けがして半年以上投げられなかったことがあった。復帰後、数年はきちんと投げられるようになったが、気持ちのどこかでかばいながら投げてしまったのが、どんどん自分の能力の衰退につながっていたのかな・・。力で押す投球を信条としてやってきたが、それができなくなってきているのを感じていた。最後までそのスタイルを崩さずにやりたかったんですけど、自分の体を自分でコントロールできなくなった。本来なら対打者に対して全力を注がないといけないのに、対自分に対してしか目を向けられなくなってしまった」と苦悶(くもん)した日々を振り返る。

 とことん真摯(しんし)に野球に取り組む男だった。「妥協はしないようにしてきた。妥協が多分、一番下手になる理由だということを学生の頃に気づいて、それから妥協と言い訳をしないようにここまでやってきたつもりです」と言い切る。常に一貫したスタイルを貫き、懸命に汗を流してきた。だからこそ故障が影響したことで、少しずつ対打者にではなく、対自身になってきたことが何よりももどかしかった。

 今季は投手陣が躍動してチームは3年ぶりのCS進出を決めた。ところが5月を最後に1軍登板機会がなく、自身は歓声に沸くベルーナドームに隣接するファーム施設にいた。「目と鼻の先にあるベルーナドームの横でしか試合をできなかったっていうのは、本当に11年間で一番悔しかったなと思いました。投手陣が頑張っている中、その輪の中に僕がいなかったというのは本当に悔しいですし、つらかった」と率直な思いも吐露したが、心中を表に出すことはなかった。朗らかな性格で常に明るく振る舞い続けた。そんな気遣いの男だけに、周囲への感謝の思いも強い。

 9月30日に埼玉県所沢市の球団事務所で開かれた引退会見。質疑応答と写真撮影が終わると、再び口を開いた。「皆さんきょうは本当にありがとうございました。報道陣の皆さまのおかげで十亀剣という選手がいろんなところで知ってもらえるきっかけになったと思います。記事を見たよと映像、ニュースを見たよと、音声を聞いたよといろんな各方面からお声がけいただいたりした。そのおかげで僕という選手が世間に広まったと思っています。本当に皆さんありがとうございました。また今後もライオンズをよろしくお願いします。ありがとうございました」。最後のあいさつは本人たっての希望だった。飾らない人柄で愛された十亀らしく、感謝の思いを胸にラストマウンドに立つ。

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