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Monday, July 11, 2022

<男も更年期 増えるLOH症候群>(上)環境変化でホルモン低下 自己実現の機会 有効 - 東京新聞

 「更年期」というと女性特有の問題と思われがちだが、男性にも起こり得る。女性と同じように性ホルモンの減少が原因だ。ただ、男性の場合は、加齢よりも、環境の変化がきっかけになることが多い。リモートワークの普及など、新型コロナウイルス禍で生活が大きく変わる中、専門外来では患者が増えているという。男性の更年期障害の仕組み、治療法や予防法を二回に分けて紹介する。 (編集委員・大森雅弥)

 愛知県に住む男性会社員Aさん(48)は、一年前から不眠で悩んでいた。職場で先輩と対立し、家でもいらいらすることが増えた。心療内科を受診したところ、うつ病との診断。だが、通院しても改善せず、退職まで考えるようになった。

 そんなとき、男性の更年期のことを知った妻の勧めで佐井泌尿器科・皮フ科クリニック(名古屋市天白区)を受診した。血液検査で男性ホルモンの「テストステロン」の量が正常値より大幅に低いことが判明。男性の更年期障害である「加齢男性性腺機能低下症候群(LOH(ロー)症候群)」と診断された−。

 ◇ 

 更年期に詳しい日本メンズヘルス医学会理事長で順天堂大教授(泌尿器外科学)の堀江重郎さん(61)によると、LOH症候群は、環境の変化など主に外的要因によって男性ホルモンが低下して起こる。女性の更年期障害は閉経に伴う女性ホルモン「エストロゲン」の減少によって「自然に起こる現象」だが、男性の場合は「病気」。早ければ三十代で発症することもあり、タレントのヒロミさん(57)も先月、同症候群で治療を受けていることをテレビ番組で告白し、注目された。

 同症候群になると、心身にさまざまな症状が現れる。Aさんのようにうつ病と重なる場合も多い。堀江さんは同症候群を疑う自覚症状として、いらいらして周りに当たる▽何かとおっくうに感じる▽体重が増えた(ベルトの穴一つ分)−の三つを挙げる。

 家族など周囲が感じる兆候は「笑わなくなった」がある。これらに該当する人は、堀江さんが考案した十項目のセルフチェック=表=を試してみよう。(1)と(7)の両方、または三つ以上の項目に当てはまる人は同症候群の疑いがあるため、泌尿器科を受診した方がいい。

 さらに最近は、同症候群の患者が増えているという。堀江さんは「専門医の間では、来院者数がコロナ禍前と比べて三倍ぐらいに増えたと話題になっている」と話す。

 その要因の一つとみられるのは、テストステロンの性質だ。主に精巣で分泌され、身体面では筋肉や骨を強くしたり、性機能を正常に保ったりするほか、抗炎症作用や認知機能などを高める働きがある。精神面では意欲全般を高め、リスクを取って行動できるようにもするという。

 道徳的な面への影響もある。さまざまな実験でテストステロンの値が高い人ほどうそをつかず、社会貢献の気持ちが強いことが分かっている。つまり、テストステロンは「社会参加のホルモン」(堀江さん)。リーダーとして皆と力を合わせ、社会の役に立つ仕事をすることに導くという。

 しかし、環境の変化などで分泌が乱れて量が減ると、こうした幅広い働きが衰えて心身に不調をもたらす。「テストステロンを維持するために重要なのは自己実現であり、社会や他人からの評価。それがないと減少する」と堀江さん。リモートワークの普及、拡大により直接人と関わり、評価される機会が少なくなっている。「コロナ禍は、多くの男性から自己実現の場を奪ってしまった」

 =(下)は19日に掲載します

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