東京大学の石井和之教授らの研究チームは空気中に漂う揮発性の有機化合物を取り込んだ結晶が自発的に液体に変わる現象を実証した。世界初の成果といい、この現象を「有機潮解」と名付けた。工業用の溶媒に使われるクロロホルムや塗料に含まれるトルエンなどを回収する技術の開発に役立つ。
結晶が空気中の水を取り込んで自発的に液体に変わる現象は「潮解」と呼ばれ、これまでもよく知られていた。塩化カルシウムを使った除湿剤に応用されているほか、塩化マグネシウムでも同様の現象が起こり食卓塩が固まる原因になる。一方、結晶が有機化合物を取り込んで液体になる現象はこれまで確認されていなかった。
研究チームはクロロホルムの蒸気を満たして密閉した容器に、様々な種類の結晶をとじ込めて実験した。クロロホルムに溶けやすい性質を持つ結晶を入れたところ、数倍の重さの液体に変化した。有機溶媒でも潮解に似た現象が起きたと考えられるという。トルエンや紡糸などに使われるジメチルホルムアミドでも同様の現象が確認できた。
石井教授は「工場や実験室で有毒ガスを回収したり、家庭内で生じたシックハウスの原因物質を吸着したりする用途などに使える可能性がある」と話す。様々な組み合わせを試して狙った物質を回収できるようにしたい考えだ。今後、連携する企業を探して実用化を目指す。
有機物でも「潮解」現象 取り込んだ結晶、液体に変化 - 日本経済新聞
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