Rechercher dans ce blog

Tuesday, March 8, 2022

人を尊重するケア「ユマニチュード」 患者が変化 驚く看護学生 - 東京新聞

血圧を測りながら患者と視線を合わせて会話する学生(左)=昨年12月、富山県内の病院で

血圧を測りながら患者と視線を合わせて会話する学生(左)=昨年12月、富山県内の病院で

 人間らしさを大切にするフランス生まれのケア技法「ユマニチュード」。富山県立大看護学部(富山市)が全国に先駆けて導入した四年間の教育プログラムを受けた看護師たちが来春以降、医療や介護の現場に出る。これまで三年間学んできた学生は「看護への考え方が変わった」。教える側も「生きる力を引き出す看護を体験できている」と手応えを感じている。 (五十住和樹)

 「寝たきりで反応がなかった八十代の男性が、自分の家の様子を話してくれた」。同学部三年の寺西香乃さん(21)は今年一月の病院実習で担当した認知症のある患者の変化に驚いた。男性の体を起こし、車いすで病室を出て明るい廊下へ。男性と同じ高さの目線になるようにかがんで手を触れ、視線を合わせて話し掛けていたら、不鮮明だった男性の言葉がはっきりとして会話ができた。「この人と話すのは難しい」との印象が消えたという。

 ユマニチュードは「あなたのことを大切に思っている」と患者や要介護者に伝えるための技法だ。寺西さんはこの時、四つの柱のうち「見る」「話す」「触れる」の三つの技法を組み合わせて実践。「入学当初は看護してあげるという意識だったが、まず患者さんがどうありたいかを考えるようになった」と自らの変化を話す。

 医療や介護従事者らでつくる日本ユマニチュード学会(東京)によると、大学教育では医学部で旭川医科大を皮切りに岡山大、奈良県立医科大、長崎大、群馬大で一部の講義にユマニチュードを導入した例がある。四年間の一貫した教育は富山県立大が初めて。

 同大が開設した専門科目「看護ケアとユマニチュード」では、一年次に「人とは何か、ケアする人とは何か」という哲学を学び、二年次は「動くことは生きること」などの概念、三年次は包括的なケア技術として認知症の人へのケアを学ぶ。それらを土台に四年次はケアのアセスメント(客観的評価)とプラン立案などに取り組む。

 毎年九月に四日間の集中講義があり、初年度の二〇一九年はユマニチュード考案者のイヴ・ジネストさんが来日して学生を直接指導した。二年目からはコロナ禍でリモート講義となり、学生は自宅、教授は大学、ジネストさんはフランスにいて画面越しの指導となるなど苦労の連続だった。

 だが、担当の岡本恵里教授によると、ユマニチュードを通して患者との関係性を築く実感を得たり、患者の変化を感じたりする学生も多く、積極性が身に付いた。「患者との距離の取り方を、学生の様子からプロの看護師が学ぶ場面もあった」。今後の課題は、ユマニチュードの哲学や方法論を実際の現場で説明できる力を養うことだという。

 同学会代表理事で東京医療センター総合内科医長の本田美和子さんは「ユマニチュードは、ヘルスケアの専門家に必要な臨床技術を哲学とコミュニケーション、生理学の観点から系統だてて学ぶことができる。正しく教えられる教員の養成が急務だ」と話す。

<ユマニチュード> 「人間らしさを取り戻す」という意味の造語。体育学が専門のフランス人イヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんが考案した。ケアに抵抗するなど行動・心理症状がある認知症の人のケアなどに有効とされる。
 「見る」「話す」「触れる」「立つ」の四つの技法を用い、患者や要介護者の元への来訪を告げる「出会いの準備」から始まる五つのステップを行うのが特徴。食事介助、清拭(せいしき)、着替えなどを単なる作業とするのでなく、患者らの尊厳や自立・自由を支えるケアとして包括的に提供し、「この人となら良い時間を過ごせる」と感じてもらえるような関係づくりに努める。


関連キーワード



おすすめ情報

Adblock test (Why?)


人を尊重するケア「ユマニチュード」 患者が変化 驚く看護学生 - 東京新聞
Read More

No comments:

Post a Comment

男性のインナー事情に変化…ワイシャツ姿を格上げする2万円超の“高級インナー”が売れるワケ | 高くても買いたい - 文春オンライン

 スーツを着る際、シャツの下にはどんなインナーを着るものだろう? 普通の白Tやタンクトップ、何も着ないなど選択肢はさまざま。  そんな男性のインナー事情に今、変化が起きている。ヨーロッパや日本の肌着ブランドが販売している高級インナーが人気を博しているのだ。人目につかないし、ユニ...