飯島可琳の観仏抄:7(最終回)
奈良に春を届ける東大寺修二会(しゅにえ)が今年も始まりました。練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれる11人の僧侶が3月1日から2週間、二月堂に籠(こ)もって本尊十一面観音菩薩(ぼさつ)に人間の過ちを懺悔(さんげ)し、天下安寧を祈ります。
『二月堂縁起絵巻』によれば、奈良時代に東大寺の実忠和尚(じっちゅうかしょう)が天界の悔過(けか)法要を目にし、下界で再現しようとしたのが起源だといいます。十一面観音を称(たた)える声明(しょうみょう)をリズムよく唱和する「宝号」、堂内を駆ける「走り」など、行は慌ただしく進みます。天界の一日は下界の400年に相当するそうですから、急いで法要を執り行わなくてはなりません。対照的に、修二会の声明には、喉(のど)を震わせ抑揚をつけて、ゆったりと十一面観音への賛美を謳(うた)いあげる部分もあります。練行衆の声は、一筋の糸が紡がれていくように間断なく内陣から流れ出し、浅い春の凍えるような冷気を温めるかのようです。
752年以来途絶えることな…
東大寺の修二会 しなやかに変化 - 朝日新聞デジタル
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