日本サッカー協会(JFA)は今年、日本代表全カテゴリにセットプレー担当のテクニカルスタッフを配置し、新ポストに栃木SC前ヘッドコーチの菅原大介氏(43)を抜擢した。U-24世代で出場した東京五輪ではセットプレーからの失点が相次ぎ、A代表では得点力不足が顕著。世界的にもセットプレーへの注目度が高まる中、ついにテコ入れが入った形だ。
JFAによると菅原氏は主に分析や資料作成を行い、選手に直接指導をするのは現場のコーチングスタッフ。JFAの反町康治技術委員長は新ポストの「素地づくり」と表現しており、花開くまでには時間がかかると思われた。だが、中国戦ではセットプレーで何度か変化が表れ、さっそくその成果が感じられた。
象徴的だったのは前半20分の右CK。MF伊東純也(ゲンク)がマイナス方向にグラウンダーのボールを蹴り出し、他の選手が相手守備陣をブロックする間、フリーになっていたMF南野拓実(リバプール)が合わせた場面だ。ファーに飛び込んだ遠藤は「完全に練習でやっていた形。練習でも流れてしまって、試合でも同じように流れてしまって悔やまれる」とゴールにつながらなかったことを反省していたが、見事にデザインされた形が見られたのは大きな進化だ。
さらに大きな変化が見られたのはスローインだった。昨年11月の活動ではDF冨安健洋(アーセナル)が取材対応の際に「現代サッカーではスローインもセットプレーと捉えて、アーセナルで練習している。スローインから一気に逆サイドに持っていければ、そこからチャンスをつくることができる。スローインも練習したほうがいい」とチームの課題を指摘する場面があったが、中国戦ではこれまで見られなかった形や決定的なチャンスが続発した。
前半6分、DF酒井宏樹(浦和)のスローインを伊東が相手の背後で受けたシーンもその一つ。酒井とDF長友佑都(FC東京)は17〜21日に行われた国内組トレーニングキャンプの最中からスローインの個人練習を行っており、チーム全体で取り組む機運が高まっているようだ。
また後半16分に決まった伊東のヘディングシュートもスローインが起点だった。DF中山雄太(ズウォレ)のスローに対し、タイミングよくMF守田英正(サンタクララ)と入れ替わった南野がリターンを返し、中山のクロスにつなげた形。投げる直前のポジションチェンジは王道ではあるが、意識の高まりがゴールにつながった側面もありそうだ。
遠藤によると「チームとしてセットプレーで取れるか取れないかは大きい。なかなか取れていない中で少し工夫をというのは少し意識していて、前日や前々日にトレーニングをしていた」と選手間でも課題を感じていた様子。その中で遠藤は「おそらく分析はかなりされていると思う。僕らに落とし込むときはまとめられた状態で落とし込まれているので、どれだけ分析があったかは見えないけど、少なからず影響はあると思っている」とセットプレー専任スタッフの貢献も語った。
一方、動きをつけたセットプレーの一辺倒になると、相手が対応しやすくなり、布陣を大きく崩すぶんだけカウンターのリスクを抱えてしまう。遠藤は「セットプレーのオプションはうまくいけば期待感が出るというか、うまくハマれば良いオプションだが、こだわりすぎるとシンプルにあげたほうがいいという話にもなる」と注意点を指摘した上で、「いろんなことをやってくるチームになって警戒されれば相手も嫌だと思うので、ポジティブに考えている」と展望を語った。
(取材・文 竹内達也)
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