【しらせで報道部・菊池健生】第63次南極地域観測隊(牛尾収輝(しゅうき)隊長)は1日、南緯55度付近の南大洋で、本格的な海洋観測を開始した。観測船しらせから海中のプランクトンの状況を調べ、塩分や水温などを計測。荒波にもまれながら観測隊、自衛隊が協力し、初回の作業を無事終えた。ほぼ同じコースで30年以上データを重ねる日本隊は、海の変化を詳しく把握できることが強み。酸性化や生態系への影響を捉え、地球規模の環境変動の解明や予測への貢献も期待される。
「停船観測、用意」。午前7時ごろ、しらせ後部甲板に観測隊員と自衛隊員計約50人が集合し、観測が始まった。時折、強い西風と波で船体が大きく傾く。甲板から見える海面が何度も近づいた。
海洋観測は力仕事だ。研究者だけでなく、設営隊員も参加する。しらせを運航する自衛隊員も全面支援。揺れる甲板で隊員と自衛隊員は声をかけ合い、観測機器を運んだ。
水深ごとの塩分や水温、プランクトン量などを測る機器をクレーンでつり上げ、海中に投入。30分ほどかけて、水深約400メートルまでの分布を調査した。「ノルパックネット」という網を使い、水深約150メートルまでの海中のプランクトンの種類も調べた。
日本隊は30年以上、同じコースで海洋観測を続けている。今回は南大洋と昭和基地近くのリュツォ・ホルム湾内の計11地点で、同様の観測を行う予定だった。だが、悪天候や海況から3地点は断念。自然相手の観測は安全を徹底し、最善を尽くすことが重要だ。
海水が冷たい南大洋は、ほかの海域よりも大気中の二酸化炭素を吸収しやすく、地球規模の問題となっている「海洋酸性化」も進行しやすい。酸性化が海の生態系に与える影響を、他海域に先駆けて調べられる可能性もある。
海洋観測を担当する63次夏隊員、佐藤弘康(ひろのり)さん(36)=マリン・ワーク・ジャパン、秋田県にかほ市出身=は「事故なく観測が始まり一安心だ。蓄積したデータは先々の人の資産にもなる」と力を込める。
南大洋、海の変化探る しらせ、観測本格始動 - 岩手日報
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