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Tuesday, December 21, 2021

時代の変化に向き合う紅白歌合戦 チーフ・プロデューサーが語る“カラフル”に込めた願い - 中日新聞

『第72回紅白歌合戦』出場歌手発表会見の模様(C)NHK

『第72回紅白歌合戦』出場歌手発表会見の模様(C)NHK

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、史上初の無観客開催となった昨年の『NHK紅白歌合戦』。今年の開催は、現時点では人数制限を行ったうえで、再び観客を入れるべく準備中だ。一方で、48年間紅白の“聖地”となってきたNHKホールが改修工事中ということもあり、舞台を東京国際フォーラムに移して実施されることになった。さらには恒例だった紅白別の司会の呼称を廃し、全員を「司会」に統一する初の取り組みも行われている。1951年のスタート以来培ってきた伝統を大切にしつつも、変化に挑むチーフ・プロデューサーの一坊寺剛氏に、「Colorful~カラフル~」をテーマに掲げた、『第72回NHK紅白歌合戦』に賭ける想いを聞いた。

■2021年最後の夜、世の中を少しでもカラフルに彩りたい

 今年の紅白のテーマである「Colorful~カラフル~」には「2021年最後の夜、世の中を少しでもカラフルに彩りたい」という想いが込められているという。

「緊急事態宣言が長引き、日々の暮らしや社会がどうなってしまうのか、モヤモヤした状態が2年間続く中で、なんとなく街の彩りが失われたように感じました。同時に、意見や考えが対立構造になりがちというか、世の中の雰囲気もどことなくぎすぎすしています。どんな色でも社会を作るうえでは大事で、それぞれの色を認め合ったり、混ざり合ったり、重なり合ったり、あらゆる色が集い、多様性を尊重することで、世の中は明るく、素敵なものになるのではないか。そんな気持ちも“カラフル”に込められています」(チーフ・プロデューサー・一坊寺剛氏/以下同)

 また、今年の会場変更という大きな課題も、制作者として「カラフル」への思いを強める一因となった。一坊寺氏は、NHKホールをホームグラウンドに観客を入れた公開生放送をコンセプトとする音楽番組『うたコン』のチーフ・プロデューサーも務めている。NHKホールが改修工事に入った今年3月以降は、同番組の収録に東京国際フォーラムを使用しているわけだが、紅白を見据えた使い方を考えるうえで、大きな気づきを得たという。

「ステージの広さから使い方、環境、会場までの物理的距離など、これまで技術も美術も、あらゆるセクションが慣れ親しんでいたNHKホールですが、今回、会場が変更されたことで、そういった経験値がゼロになりました。そういう意味で、毎年、同じ会場で番組を放送できていたことの有難みを痛感したのは言うまでもありません。でも、その一方で、会場が変わることによる気づきもありました。それは、NHKホールという環境からしか12月31日の世の中の景色を考えてこなかったんだな、ということです。大みそかの日本各地にはいろいろなみなさんがいて、いろいろな暮らしがある。自分たちが新たな会場でゼロから作り上げる立場に立ち戻れたことで、改めてそのことにも思いが馳せられるようになり、日本各地にあるいろいろなカラーも今回の紅白には込めたいと思ったんです」

■司会には“分ける”のではなく、協力し“つなぐ”役目を

 今年の大きな変化は会場だけではない。これまでの「紅組司会」「白組司会」「総合司会」の呼称が廃され、全員「司会」に統一。番組の進行とともに、出演するすべての歌手・アーティストを応援する役割となった。

「そもそも歌のステージというのは、年齢も性別も関係なく、1つの舞台に素晴らしいパフォーマンスをなさる方々が立ち、MCがそれを盛り上げるというのが原点のスタイルです。紅白は、そこに制作者サイドが“紅組対白組”という対立軸を作り、演出を加えてきたわけですが、今回は“分ける”のではなく、みんなで協力して一緒にやっていこうよというスタイルにしたいと考えました」

 とはいえ、紅組・白組という形態を残したのは、「70年以上の歴史の中で、この形に慣れ親しんでいる方やおなじみの形を楽しみにされている方も多い」という判断から。紅白は常にマンネリの批判にさらされてきているが、その一方で、何百年も前から続く伝統的な祭りが、変わらず人々に愛されているように、“変わらないこと”が魅力となり、それを支持する人たちが多数存在することもまた事実。

「紅白という分け方については議論の余地はたくさんあると思います。ただ、どうやって分けても、結局、なにかしらの分断にはなりますので、そこは司会という役目がそれを繋ぎ、大団円を迎えるのを導く存在としてあれば、歌合戦という仕組みはあってもいいのかなと考えています」

 ちなみに、従来どおりの対抗戦を楽しみたいという人たちのために、昨年同様、視聴者や会場の観客が判定に参加できる仕組みも続行するという。

■『うたコン』で考え抜いてきた“今、お届けするべきものは何か”を重視

 初の試みとなる「司会」を担うことになったのは、「視聴者と気持ちを共感できる方」であることが評価された大泉洋、川口春奈、NHKの和久田麻由子アナウンサー。一坊寺氏は3人にこんな期待を寄せる。

「最初は緊張で固かった3人が、協力し合いながら、また、J-POPから演歌、バラードや激しい歌といろいろなタイプの歌が披露される中で、『あちらが良かった』『こちらが良かった』と感想を言い合いながら、起承転結のあるストーリーを紡いでいっていただけたらと思っています。そして、司会の3人の物語が、披露される素晴らしい歌の数々と合わさることで、2021年の『第72回NHK紅白歌合戦』が、視聴者に、ワクワクや共感、多様性の素晴らしさや華やかさなど、何らかのメッセージを伝えられる存在になることを期待しています」

 一方、出場歌手については、選考ポイントは、例年通り、「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画・演出にふさわしいかどうか」の3点を柱に、総合的に判断。それに加え、コロナ禍の2年間、『うたコン』を制作しながら考え続けてきたことも重視して、演出チーム全体で議論を繰り返したという。

「今、世の中のムードも、エンターテインメントの流行のスパンも、非常に短くなっています。そんな中、社会をより良くするためのツールとして歌番組があると考えるなら、歌そのものを大事にすること、そして、今、お届けすべきものは何かを考えることが何より重要だと、この2年間、『うたコン』で考え抜いてきました。それは、今、紅白においても、チーム全体で共有している思いです」

 選抜された出場者に関しては、「今と向き合っていらっしゃる方の集合体になっているかな」と一坊寺氏。

「どういう括りかと聞かれたら『日本の音楽です』ということになるわけですが(笑)、僕たちテレビ局としては、音楽の素晴らしさをジャンルに関係なく、いろんな番組でお届けするのが役目です。また、多様な趣味趣向、細分化された音楽の楽しみ方がある中で、同じ時間に、視聴者のみなさんが共感できるものをお届けするのもマスメディアであるテレビの音楽番組の意義だと考えています。そのうえで、紅白は僕らが1年間やってきたことの総決算ですから、視聴率に表れる結果がどうであれ、紅白というものが12月31日の夜に日本にあってよかったね、そうみなさんに言っていただけるものにしなければと考えています」

 コロナ禍に加え、会場の変更などの苦労も加わった今年。しかし、一坊寺氏は「それも新しいものを生み出せるチャンスとポジティブに受け止めて、その環境を活かした素晴らしいものにするとともに、時代に応じたステップアップを目指したい」と目を輝かせる。伝統を大切にしながらも、時代に応じて進化を求め続けている紅白の新たな挑戦に注目したい。

文・河上いつ子

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