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Sunday, October 31, 2021

<社説>政権継続も厳しい審判 民意の覚醒が変化促す - 東京新聞

 衆院選で自民党は単独過半数を維持したが、甘利明幹事長が小選挙区で敗北し、辞意を固めるなど厳しい選挙戦を強いられた。

 国民を蔑(ないがし)ろにし、権力の私物化が指摘された「安倍・菅」政治を清算しようとしない岸田政権に、有権者が不信感を募らせたからにほかならない。主権者としての目覚め、覚醒した民意こそが変化を促す。自公政権は継続するが、岸田文雄首相は有権者の審判を厳しく受け止める必要がある。

 今回の衆院選は、自公連立に政権を委ね続けるのか、立憲民主党など野党勢力に政権を託すのかを問う政権選択だった。

 与党は過半数を維持したとはいえ、決して「白紙委任」ではないことを、引き続き政権を担う人たちは肝に銘じなければならない。

 菅前内閣の終焉(しゅうえん)とともに発足して間もない岸田政権は、実績を上げるには至っていない。岸田氏は「未来選択選挙」を掲げて選挙戦に臨んだとはいえ、政権運営能力そのものは未知数だ。

◆問われた「安倍・菅」政治

 有権者は岸田政権に信頼を置いたわけではなく、首相のお手並み拝見という結果にすぎないと、政権は受け止めた方がよい。

 選挙では、新型コロナウイルス感染症から国民の命と暮らしをどう守るのかはもちろん、感染拡大で停滞した経済をどう立て直すのか、そして、安倍・菅政権の九年近くで傷ついた民主主義をどう再生するのかも問われた。

 さらに、選択的夫婦別姓の是非や性的少数者(LGBT)差別解消に向けた法整備など、社会の在り方も主要な争点となった。

 もちろん政権選択の衆院選である以上、選挙結果は現政権の継続を意味する。ただ、それは政権や国会を、意のままに運営していいという意味では決してない。

 憲法一五条は、国会議員を含む公務員はすべて「全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定める。与野党を問わず、議員に選ばれた以上、支持者だけでなく支持しなかった人たちの意見にも耳を傾けなければなるまい。

 岸田氏が強調する「聞く力」も本来、自民党や与党支持者以外に使われてこそ、意味がある。

 新型コロナの新規感染者数は減少傾向にあるが、感染症流行期の冬にかけて、コロナ感染が再び拡大する恐れも指摘される。

 自民党は公約にワクチン接種推進や病床・人材の確保、人流抑制や医療確保のため行政に強い権限を与える法改正などを掲げた。

 これまでの政権のように独善に陥り、国会や記者会見などで国民への丁寧な説明を怠れば、対策の実効性を上げることはできない。必要であれば、野党の提案も大胆に採用する度量が必要だ。それこそが聞く力にほかならない。

◆分配優先求めるうねり

 経済政策も同様である。自民党は「成長と分配の好循環」を掲げながらも成長優先を強調した。まずは経済成長実現のための対策を講じ、「新しい資本主義」の在り方を模索するのだろうが、岸田氏が評価する成長優先の「アベノミクス」こそが格差を拡大させたとの指摘に向き合う必要がある。

 選挙戦では、成長よりも分配を優先すべしとの国民の思いが、大きなうねりになったことは否定できまい。分配をどう増やし、格差を縮小していくのか、政権として真剣に考える必要がある。

 指摘せざるを得ないのは岸田氏が、九月の自民党総裁選時に「聞く力」とともに強調していた「民主主義の危機」を、首相就任後は語らなくなったことだ。

 今回、その是非が問われた「安倍・菅」政治は、政権中枢に近い人たちの優遇に権力を使い、異を唱える人を排除する側近政治、換言すれば、主権者である国民や国会を軽視する政治だった。

 森友・加計学園や桜を見る会を巡る問題、特定候補者への巨額資金提供、日本学術会議会員候補の任命拒否は、真相が解明され、国民に説明が尽くされたとは言い難い。再調査や決定撤回は毀損(きそん)された民主主義の基盤を再生する作業だったにもかかわらず、岸田氏をはじめ自民党全体が否定的だ。

 前政権の「負の遺産」を清算しようとしないことで募る有権者の不信を直視せねばなるまい。

◆民主主義再生のために

 二年弱のコロナ禍で私たちは、自らの選択が自分や家族、親しい人たちの命や暮らしに直結することを思い知らされた。

 政権の選択肢を示すことは与野党を問わず政党の責任だが、国や地方の政治を変えるにはまず、私たち有権者が目覚め、積極的に政治に関与しなければならない。

 来年夏には参院選がある。覚醒した民意こそが政治を変え、民主主義を再生する。今回の衆院選がその転換点になると信じたい。

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