グーグルが「Gmail」や「Google ドキュメント」をはじめとする主要なウェブアプリの機能を強化し、そのユーザー体験を向上させようとしている。そこで力を入れているのが、ユーザーがメッセージのやりとりに利用するアプリの機能だ。
「Google Chat」や「Google Workspace」という言葉を目にして、いったい何が起きているかと思った人もいるかもしれない。要するに、グーグルが提供するサーヴィスの体験がすべての人にとって新しくなり、それをすぐに試せるということである。
グーグルのサーヴィスの例に違わず、その変更点の理解は容易ではない。だが、とっかかりとして最もわかりやすいのが、新しい(そして古い)インスタントメッセージアプリ「Google Chat」の変化だろう。
グーグルのメッセージアプリの複雑な歴史
最初からすべて説明するつもりはないが、グーグルのメッセージサーヴィスの歴史を少し知ることで、今回の変更の背景を理解できる。というのも、このメッセージプラットフォームは多くの点において、グーグルが今年以降に計画している変化の鍵を握るからだ。
グーグルのアプリで友人や家族にインスタントメッセージを送っている人にとって、最もなじみ深いのは「Google ハングアウト」だろう。つい最近までウェブ版のGmailの画面の片隅にも配置されていた、あのハングアウトだ。ハングアウトはウェブ上の独立したアプリとしても、モバイルプラットフォームでも利用できる。
一時はハングアウトがグーグルのあらゆる機能を網羅したメッセージアプリになると思われていた(かつてはSMSに対応していたことさえあった)。まず、ハングアウトが登場してから4年後の2017年、グーグルはテキスト用の「Hangouts Chat」とヴィデオ通話用の「Hangouts Meet」を発表した。これらは「G Suite」(旧Google Apps)の有料ユーザーを対象としており、ビジネスに特化したハングアウトの派生製品である。
G Suiteについても、さらに説明が必要だろう。現在は「Google Workspace」と呼ばれており、誰もが無料で使えるツール(Gmail、Google ドキュメント、Google カレンダーなど)に、企業やチーム向けの追加機能(ドメインや連絡先データベースの管理など)を追加したものになっている。有料で使えるアプリのコレクションであり、あなたの職場でも利用されているかもしれない。
もともとハングアウトから生まれたHangouts ChatとHangouts Meetは現在、「Google Chat」と「Google Meet」にリブランディングされている。そしていまではぐるっと回って企業のみならず、消費者にとってもハングアウトにとって代わるサーヴィスになった。まぎらわしいと感じるかもしれないが、ここ数年のグーグルのメッセージアプリ戦略は、基本的にそういうものなのである。
Google ChatとGoogle Meetには、ハングアウトから進化した点がいくつかある。Google Chatは、アップルの「メッセージ」やWhatsAppよりもSlackやMicrosoft Teamsに近く、ファイル共有やグループチャットなどの機能を簡単に利用できる。
これに対してGoogle Meetは、Zoomの流れをくむ包括的なヴィデオ通話アプリケーションだ。Google Meetは、グーグルのもうひとつのヴィデオ通話アプリである「Google Duo」にいずれは取って代わるという噂もあるが、まだ実現していない。
少し込み入った話になってきたが、もうひとつ重要な情報がある。Google Workspace(以前はG Suiteと呼ばれ、企業向けの有料パッケージだった)は、Googleアカウントをもつすべての利用者へと拡大される予定だ。これにより、ウェブやモバイルで利用できる多数のGoogleアプリとの統合が強化されることになる。
主な進化のポイント
年内にグーグルが実装する主な変更点はふたつある。ひとつは、ウェブ版やモバイル版のGmailなどあらゆる場所において、Google ChatとGoogle Meetがハングアウトにとって代わることだ。
ハングアウトの過去のチャットはそのまま引き継がれるし、単なるリブランディングとしての側面もある。GmailでGoogle Chatを有効にしてスマートフォンにアプリをインストールすれば、ハングアウトでの会話をGoogle Chatでそのまま引き継げる。
これまで説明してきたように、これらのアプリにはビジネス製品として利用されていた間に開発された複数の追加機能が備わっている。例えば、文書において「@」記号を使って連絡先をメンションできたり、複数のスレッドを使って会話をしたりなど、新しいツールが用意されている点だ。今後はこれらの機能を会社の同僚のみならず、家族や友人とも使うことになる。
ふたつ目の変更点も似たような性質のもので、ビジネス向けのWorkspaceパッケージを軽量化したヴァージョンになる。これがGoogle アカウントをもつすべての人に、今後数カ月のうちに提供される。
Google ChatやGoogle Meetと同様に、これはグーグルが一般消費者にプロレヴェルのツールを提供することを意味する。こうしたプロレヴェルのツールを、今度は地元のPTAの会合や毎週のブッククラブ、家族の集まりなどに利用できるというわけだ。
これらのアップグレードは大規模なものではないが、その違いには容易に気づくだろう。Gmail、Google カレンダー、Google ドライブなどへのアクセスはこれまでどおり可能だが、さらに密接に連携され、コラボレーションとシェアの機能が強化される。
例えばタスクのチェックリストを作成し、それぞれのタスクを別の連絡先に割り当てたりできる。これらの新機能の多くについては、あらゆる機能を横断するGoogle Chatが一部を担うことになる。
そう考えると、GmailでGoogle Chatをオンにすることで、アカウントのGoogle Workspaceを有効にできるようになることは理にかなっている。Gmailの設定ページにある「チャットと会議」のタブで、「チャット」の隣にある「Google Chat」を選択すればいい。
いまの状況の説明にかなりスペースを割いてしまったが、ユーザーの目に見えるものとしてはそこまで大きな変化はない。すでに使っているツールがいくつかアップグレードされ、見た目がすっきりして、各機能の統合も強化される(それと「Workspace」という言葉をよく目にするようになるかもしれない)。
これらの新しい機能は誰でも無料で利用できるが、今年後半にはフリーランスや起業家を対象とした月額10ドルのサブスクリプション「Google Workspace Individual」が登場し、GoogleのAIツールを活用したメールマーケティングやスマート予約サーヴィスなどの追加ツールが提供される予定だ。これはグーグルのアプリを無料で利用している一般ユーザーと、大規模なWorkspaceチームをもつ企業の中間に位置するユーザーを対象としたサーヴィスとなる。
ハングアウトやWorkspace以外のサーヴィスは、今後もしばらく使い続けることができる。だが、グーグルの方向性はすでにひとつに定まっており、有料・無料ユーザーにかかわらず、すべてのユーザーがこの変更に巻き込まれることになる。Google Chat、Google Meet、Workspaceは全ユーザーに提供される予定だ。
これは変化に慣れるまで多少の時間が必要だったとしても、より優れた体験とより多くの機能がユーザーにもたらされることを意味する。詳細については、グーグルのブログ投稿を読んでみてほしい。
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