コロナ禍は人の消費行動を変え、同時にビジネスに大きな変化をもたらした。その中で、ECを活用し、新たな挑戦をしたことで大きく売り上げを伸ばした中小企業を2社、紹介する。サンドロッツとワイ・エス・エヌだ。両社に共通するのは、「おうち需要」の増加を機敏に捉えたこと。
2社のキーマンに、コロナ禍を乗り越えて成長できた秘訣を聞いた。
「おうち時間を楽しむ」ための製品を急ピッチに具現化
植村 祐貴(うえむら・ゆうき)氏/サンドロッツ 代表取締役社長
提供:Amazon
2017年に創業したサンドロッツは、当時食品メーカーに勤めていた植村 祐貴氏がECの成長を予見し個人で興したECサイトをベースに、法人化するかたちで立ち上がった。当時はオリジナル製品がなかったが、現在はオーディオ機器を中心としたオリジナルの製品を販売している。
2019年にはオリジナルブランド「FunLogy(ファンロジー)」を創設。なかでも、コロナ禍において特に伸長したのがプロジェクターだという。
「弊社の企業理念が『365日を楽しく』なのですが、それを科学技術で体現するためにFun+TechnologyでFunLogyと名付けました。創設時からプロジェクターを主力で取り扱ってきましたが、コロナ禍の影響でより注目を集めるようになりました」(植村氏)
ファンロジーの小型プロジェクター、モバイルモニター、ポータブルスピーカー
提供:Amazon
実際、プロジェクターの売り上げはコロナ以前の1.5〜2倍に成長。その成長の背景にあるのは、「価値観の変化」だと植村氏はいう。プロジェクターといえば職場で使うもの、エンターテインメントは外で楽しむもの、といった考え方から、「“おうち時間”をいかに楽しいものにしようか」と変わってきているというのだ。
さらにコロナ禍を受けてすぐに企画したのが、さまざまな場所でのパソコン作業の効率を高めるモバイルモニターだった。
「2020年4月に緊急事態宣言があって、販売したのが12月の頭ですから、かなりハイピッチで企画から販売へ進めたと思います」(植村氏)
アミューズメント施設の休業を契機に、半年で立ち上げたEC事業
土屋 まな美(つちや・まなみ)氏/ワイ・エス・エヌ 営業部部長
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一方、ワイ・エス・エヌは、昭和33年創業の会社をルーツに持つ歴史のある会社だ。近年はゲームセンターなどのアミューズメント施設用の製品を製造していた。コロナ禍の影響により、どのような苦労とそこからの逆転があったのか。ワイ・エス・エヌの営業部部長 土屋 まな美氏はこのように話す。
「緊急事態宣言によってアミューズメント施設の多くが閉まることになって、打撃を受けました。そこで急遽『applife(アプライフ)』というブランドとEC事業を立ち上げることにしました」(土屋氏)
アプライフのアルコールディスペンサー、ソープディスペンサー、ドーナツメーカー、ワッフルメーカーなど。
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アプライフでは、ワッフルメーカーやクレープメーカーといったホームキッチン用品に加え、ソープディスペンサーやアルコール消毒用のポンプスタンドといった衛生用品も扱っている。
「子どもたちも気軽に外出できない中で、家族で料理を作れるシリーズがあるといいなと思って。もともと、アミューズメント施設用の製品でも実用品のニーズはけっこうあって、衛生用品や調理雑貨も企画・販売していたという経緯もあります」(土屋氏)
約半年ほどで販売にこぎつけた結果、時代の後押しもあり、ホームキッチン用品も衛生用品も注目を浴び、EC事業は好調なスタートを切った。
Amazonの活用が成長のテコになった
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コロナ禍において業績をあげる両企業の共通点がAmazonの活用だ。
サンドロッツはAmazonのカスタマーレビューを従業員のKPIのひとつにしているという。
「既存製品のレビューを見て、どういった問題点があるのかというシミュレーションをして製品開発をするだけでなく、発売後もカスタマーサポートがお客様の声を拾い上げて、迅速に改善していくことを大切にしています」(植村氏)
先述のモバイルモニターにおいては、カバーのマグネットの磁力が強すぎて予期せぬ動きをしてしまうというお客様に、磁力を弱めて調整したものを届けたという。そうした積み重ねによって顧客からの信頼を高めている。
提供:Amazon
ワイ・エス・エヌは、ECのスムーズな立ち上げにAmazonが役立ったそうだ。
「まったくの未経験からの立ち上げで工程も分からない状態でしたが、Amazonの営業担当者がマラソンの伴走者のように、こちらのペースに合わせて的確なアドバイスをくれたんです。一つをクリアすると次のマイルストーンを提示してくれるので、とてもありがたいなと」(土屋氏)
両社が口をそろえて助かったというのが、Amazonの物流拠点に商品を預けるだけで、保管から注文処理、配送、返品処理までをAmazonが一括で代行する「フルフィルメント by Amazon(FBA)」。土屋氏は「休日の出荷、お客様の対応、返品も対応してくれるので、トータルの時間とコストを考えるとすごくコスパが良い」、植村氏は「手作業でやっていたらとんでもない労力。ここまで短期間で成長できた大きな要因」と太鼓判を押す。
真のコストパフォーマンス、海外展開…挑戦は続く
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最後に、両社に今後の展望を聞いた。
「おうち時間を楽しくするという価値観は、コロナ禍が収まってもずっと残ると思い、いまはお風呂やキャンプで使える小型の防水スピーカーを企画中です。今後は、社員の働く環境を整えて生産性を高めることと、カスタマーレビューの高評価を両立していきたいですね。お客様にはコストパフォーマンスがいいと言っていただけることが多いので、これからも価格に対する性能やデザイン、アフターサポートも含めたところで勝負していきたいと思っています」(植村氏)
「私自身、実は昨年まで台湾で暮らしていて、Amazon.co.jpで日本の商品を買っていたんです。そのときに日本とつながっている安心感がありました。だからこそ海外のAmazonのマーケットプレイスで販売できるAmazon グローバルセリングにも挑戦していきたいです。販売するだけではなく、メーカーとお客様がつながっているという実感を持ってもらえるようにしていきたいと思っています」(土屋氏)
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