今年は猛暑が続き、熱中症が心配です。オリンピック日本代表に同行した医師の武藤芳照・東京大名誉教授は、水を「飲んではいけない」から「飲まなければならない」という意識に変わってきたと話します。なぜ水分補給をしなければならないのか、聞きました。
――ふだん、どのぐらいの水分を取ることが必要なのでしょうか。
「私たちの体からは、汗や尿、呼気、皮膚を通じて1日に2.5リットルの水分が失われています。ただ、食事でとったり、体内でつくられたりする水分の量は1.3リットルです」
「そのため一般的には、1日に1.2リットル程度の水を飲むことが推奨されています。でもどれくらい水を飲んだかカウントしながら過ごすのは難しいですね。だから、『出勤したら』『休憩中に』といった具合に、何かの合間にこまめに飲む習慣をつけることが大切です。量はコップ1杯くらいで構いません。私はそれに加え、『目覚めの1杯』と『寝る前の1杯』の水を飲むことを勧めています」
不足すれば熱中症、心筋梗塞のリスクも
――そもそもなぜ水分補給は大切なのでしょうか。
「私たちの体のおよそ60%は水でできていると言われています。幼い子どもであればその割合はもっと高い。水は生命の源と言っていいくらいです」
「それが不足するような事態になると、当然、体に変調をきたすし、熱中症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞といった重大な疾患を招いたり、死に至るような事故につながったりします」
「特に高齢者は、のどの渇きや暑さを感じづらくなっていますから、のどが渇いたと感じたときにはすでに脱水が進んでいるおそれがある。その前に、水を飲むことが大事です」
――運動する際は、さらに水分補給が大事になりますね。
「もちろんです。運動をすれば汗が出ます。汗は体の余分な熱を下げ、体温を調整する役割がある。体内の水分が足りなくなれば、それができず、筋肉のけいれんを起こしたり、脳機能が低下してしまったりします」
「ただ、残念なことに『運動中に水を飲んではいけない』という間違った常識が、スポーツ界や教育界では長年伝えられてきました。運動中に水を飲むと、バテやすくなる。動きが鈍くなる。かえって汗をかきやすくなる――といった言説です」
「水抜き油抜き」で鍛錬
――いつから運動中に水を飲んではいけないという考え方があったのでしょうか。
「明治期には、『駅伝』の名…
「飲むな」から「飲むべきだ」へ 猛暑時代、変化した水分補給の常識:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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