恐竜の化石が多く発掘される米国のグレートプレーン。写真は北部のノースダコタ州の風景 photo by gettyimages
ティラノサウルスは最も研究されている恐竜ではありますが、まだまだわからないことが多いのが実際のところです。たとえば「ティラノサウルスには羽毛は生えていたのか?」という一般的な問いにさえ、まだ確定した問いはないのです。
一方で、ティラノサウルスの仲間は、北極に近いアラスカや日本にも生息していたことが分かっています。新たな発見があるたびに新しいことがわかり、そしてまた新たな謎が出てくるのがティラノサウルス研究なのです。
そんなティラノサウルス研究の最新事情を、『ティラノサウルス解体新書』(講談社ブルーバックス)から抜粋・再編集してお届けします。今回は、アメリカ大陸のティラノサウルスが、大陸の変動にどう影響を受けたか? という問題を見てみます。
ティラノ軍団と「海」がどう関係する?
さて、「暴君恐竜の進化は、白亜紀後期の海の上昇と下降を追跡する」という研究の面白いところはこれだけではありません。もう一度、論文のタイトルに注目してみてください。なぜか「海」という言葉が入っています。ティラノ軍団と海にはどのような関係があるのでしょうか?
まずは、アメリカの地理についておさらいしておきます。あるサイトに掲載されていた「アメリカ旅行人気都市ランキング」では、1位がニューヨーク、2位がハワイ、3位ラスベガス、4位オーランド、5位シカゴと続きます。ちなみに私のイチオシであるジャズの街、ニューオリンズは6位。綺麗なビーチのあるサンディエゴは7位です。
シーフードが美味しいシアトルは17位、私がかつて暮らしていたオースティンは21位、アラモの砦があるサンアントニオは24位です。番外としては、ロッキー山脈を有する州(モンタナ州、アイダホ州、ワイオミング州、コロラド州、ユタ州、ニューメキシコ州)があります。ロッキー山脈は北にも延びていて、アルバータ州とブリティッシュコロンビア州にまたがり、「カナディアンローッキー」とよばれています。
アメリカの地図を広げて、これらの都市がどこにあるかチェックしてみてください。東海岸に位置する都市は、ニューヨークとオーランド。東海岸に位置するのは、シアトルとサンディエゴ。また、ミシシッピー川の河口にある町がニューオリンズです。そして、おそらく中学校の授業で習っているはずの、ロッキー山脈やアパラチア山脈、グレートプレーンズの場所も見つけてください。
アメリカ本土は、ミシシッピー川から西を西部、それより東を東部と表現します。そしてアパラチア山脈は、東海岸線沿いに連なる山脈で、一番高いところで2000メートルほどの、美しい丘陵地です。グレートプレーンズは、ロッキー山脈の東に広がる大平原で、ここには北米大陸の多くの恐竜化石産地があります(記事冒頭の写真)。
恐竜に影響をあたえた「大陸の変化」
このグレートプレーンズは今でこそ大草原が広がるエリアですが、じつは恐竜時代は海でした。白亜紀の中期から終わりにかけ、「西部内陸海路(Western Internal Seaway)」と呼ばれる浅い海が広がっていたのです。
この海は、北極海とメキシコ湾をつなぐもので、北米大陸を東西に分断していました。つまり、この時代の北米大陸は、西の大陸(ララミディア大陸)と東の大陸(アパラチア大陸)で構成されていました。
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