第91回 シェアドリーダーシップを実践するコツ
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商品開発部の牧野リーダー(仮名)からの相談です。
デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、人工知能(AI)の進化によってビジネス環境は大きく変化しています。良いものを造れば、黙っていても売れるという時代ではありません。これまでにないレベルの幅広い知識と専門性、スピード、柔軟性が求められています。予期しない問題が発生したとき、迅速かつ適切な意思決定を行うことが難しくなっています。1人のリーダーだけで最新の情報を常に把握しながら、複雑な顧客ニーズや課題に対処することには限界があり、荷が重過ぎると感じています。私はリーダーとして、どのような考え方でメンバーに関わっていけばよいでしょうか。
これまで管理職の多くの皆さんは「部下を引っ張っていくのが管理職」といわれてきたのではないでしょうか。しかし、業務のデジタル化やDXの推進、新型コロナウイルス禍によって世界は大きく変わりました。VUCA(ブーカ、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代とも呼ばれ、ビジネスにおいて未来の予測が難しい時代となっています。
これまでのビジネスシーンでは「明確なゴール」が定められている場合が多く、1つの目標に向けてメンバーが協力し合うことで成果を出すことができました。優れた1人のリーダーがチームを引っ張るスタイルが有効に機能したのです。
しかし、昨今はビジネスのゴールが多様化し、1人のリーダーだけで全ての問題を解決することが難しくなっています。優れた能力を持つリーダーであっても1人の判断や知識、実行力だけでは乗り切れない時代を迎えているのです。
こうした状況で成果を出すには、チームメンバー1人ひとりの得意分野を最大限に生かすことが求められます。そこで注目されるようになってきたのが、「シェアドリーダーシップ」です。
シェアドリーダーシップとは
シェアドリーダーシップとは、リーダーだけがチームをけん引するのではなく、チームメンバーのそれぞれが必要な場面でリーダーシップを発揮するという考え方です。リーダーはメンバーとの協力と信頼に基づいて連携し、意見やアイデアを共有して、チームの目標に向けて共に進んでいきます。
リーダーは透明性を確保しながらメンバーと積極的にコミュニケーションを取ります。メンバーが組織の状況や目標について正確な情報を得ることができれば、メンバー自身の意見やアイデアでリーダーシップを発揮する機会を多く持つことができます。
リーダーはメンバーの成長を支援するためのフィードバックやコーチングを行い、メンバーは自らの能力を最大限に発揮することで、チームのパフォーマンスが向上するのです。
シェアドリーダーシップのメリット
シェアドリーダーシップには、次のようなメリットがあります。
[1]効果的な決定ができる
各メンバーが意見やアイデアを提供することで、特定の視点が決定に影響を与えることを防ぎ、総合的でさまざまな視点を反映した意思決定ができます。結果として、互いの苦手分野を補強し合い、チーム全体の生産性向上につながります。
[2]新たなアイデアが生まれやすくなる
シェアドリーダーシップを実現することで、メンバーそれぞれの自主性が養われます。メンバー間の意見交換が活発になり、新たなアイデアが生まれやすい環境になります。また、特定のスキルや専門知識を持つメンバーが意見交換することで、イノベーションを期待できます。
[3]メンバーのモチベーションが向上する
チームメンバーがリーダーシップを発揮する機会が増えることで、自分の意見やアイデアが重視され、尊重されていると感じることができます。チームの意思決定に関わる機会が増えれば、スキルが強化されて、モチベーションも高まります。
[4]リーダーを育てる環境づくりができる
メンバーは経験にかかわらず、日々の業務の中でリーダーシップを実践して学ぶ機会を持てます。役職上のリーダーになる前から視座を高く持つことを意識することで、次のリーダーが自然と生まれる環境づくりができるのです。
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