2023/06/28 05:00 ウェザーニュース
梅雨どきは、天気痛を起こす”雨ダルさん”にとって辛い時期です。ウェザーニューズ気象病顧問アドバイザーで愛知医科大学客員教授・中部大学教授の佐藤純先生に、雨や天気の影響で不調が起きるしくみを気圧センサーから解き明かしていただきましょう。
気圧センサーから雨ダルに!?
「天気がこのように多種多様な症状をもたらすのは、自律神経と関わりがあるからです。
自律神経とは、全身に張り巡らされた末梢神経で、血管や内臓などをコントロールしています。私たちの意思とは関係なく働いており、体だけでなく心にも影響します」(佐藤先生)
なぜ天気の変化が自律神経に影響するのでしょうか。
「天気が変化するときは、気温・気圧・湿度などが変化します。人の体は、気温や湿度を皮膚にあるセンサーで感じとっています。気温や湿度のように意識されませんが、気圧の変化も耳の内部にある内耳(ないじ)の気圧センサーで察知しています。
気圧が変化すると、耳に何らかの病気がある場合は悪化したり、問題はなくても耳がつまる感じがすることがあるのも、この影響と考えられます」(佐藤先生)
気圧の変化の情報は脳へと伝えられます。
「内耳で察知した気圧の変化は、脳と内耳をつなぐ前庭(ぜんてい)神経に伝わります。前庭神経とは、体の傾きや回転を感じ取り脳に伝える神経で、三半規管(さんはんきかん)に分布しています。
前庭神経が興奮することで、耳からは“回転”の情報が脳に伝えられますが、目など他の器官は”回転”を感じていません。結果として混乱した情報が脳へ伝わります。これがストレスとなって過度に交感神経を興奮させ、自律神経の乱れにつながるのです」(佐藤先生)
雨ダルさんが苦手なもの
「研究により、雨ダルさんの内耳は気圧の変化に弱いことがわかってきました。例えば、内耳に微弱な電流を流してめまいを起こす実験では、雨ダルさんはごく弱い電流でもめまいを起こしたのです。
また、この実験でめまいを感じたあとに電流を下げていくと、雨ダルさんはほかの人より長くめまいを感じるという結果になりました」(佐藤先生)
さらに症状を悪化させてしまう原因もあります。
「雨ダルさんは、自律神経の切り替えがあまりうまくないのです。
ストレスは、環境の変化に体を対応させるためのスイッチでもあります。気温が上がるとそのストレスで交感神経が活発になり汗をかく、というのが一例です。
しかし、雨ダルさんは交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、交感神経が過剰に働いて、痛みなどの不調につながってしまうのです。交感神経が活発になると、血管が収縮し血行が悪くなること、そして痛みの神経に直接作用してしまうことで、痛みが悪化します」(佐藤先生)
つまり雨ダルさんの内耳は気圧の変化に敏感で、自律神経が乱れやすく、症状が悪化しやすいというのです。
雨ダル対策は耳から
「内耳のある耳の血行をよくすることが役立ちます。不調の予兆を感じたら、『くるくる耳マッサージ』を行いましょう。ホットタオルを耳に当て、耳と耳の周囲をじんわり温めるのも効果的です。濡らしたタオルを耐熱袋に入れて、電子レンジで1分ほど加熱すれば簡単です」(佐藤先生)
症状が軽くても、見逃してはいけないといいます。
「天気痛など慢性痛は放置すると増幅(ぞうふく)することがあります。痛みがストレスとなって血行が悪くなり、さらに痛みが強くなるという負のスパイラルに陥ってしまう危険もあります。
対策は本格的な症状が出る前に早めに行うこと。予兆がなくても、天気予報によってくるくる耳マッサージを行うか、日課とするようにすればなおよいです。
症状が辛かったり、なかなか改善がみられないときは、頭痛外来や慢性痛専門外来を受診することをオススメします」(佐藤先生)
自分が雨ダルさんだと早めに気づけたら、ラッキーだと考えてぜひ改善していきましょう。
参考資料など
ここをケアすれば楽になる? 気圧変化を敏感に察知する身体の気圧センサーとは - ウェザーニュース
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