企業のメインバンクに、じわり変化が生じている。
企業信用調査の帝国データバンクの「全国企業『メインバンク』動向調査」(2022年12月16日発表)によると、2022年のメインバンクの企業数のトップは、9万5718社で三菱UFJ銀行だった。2009年の調査開始以降14年連続のトップだ。ただ、企業数は減少が続いているほか、全国シェアも6.53%と前年から0.11ポイント減少。シェアは13年連続の縮小している。
そうしたなか、大きくシェアを伸ばしたのが、実店舗を持たない「ネット銀行」だ。ネット銀行のシェアは0.17%で前年比0.03ポイント増、企業数で約2500社に達した。10年前から企業数で5.5倍、シェアで約6倍に拡大。企業の存在感がますます高まっている。
「ネット銀行」シェア、10年で6倍 楽天銀行は初の1000社
調査で、メインバンクの企業数を業態別にみると、地方銀行や信用金庫の地域金融機関がシェアを伸ばしている。シェアが最も高いのは、「地方銀行」で40.52%。前年から0.01ポイント増えた。全業態で唯一、3年連続でのシェア4割を超え、2009年の調査開始以降、地方銀行のシェアは総じて拡大傾向が続いている。
次いでシェアが大きいのは「信用金庫」で23.47%。4年連続でシェアが拡大したほか、拡大幅は0.08ポイントと、全業態で最大だった。エリアや県単位で拠点の集約・再編が続く「農協」(シェアは1.24%)も拡大している。
メガバンク(都市銀行)はシェアを落としている。「都市銀行(メガバンク)」のシェアは19.30%で、前年を0.24ポイント下回り、過去最低を更新した。シェアの下げ幅は、前年と並んで09年以来過去最大で、シェア縮小の傾向が続く。
また、さえないのが「第二地方銀行」。シェアは9.64%で、4年連続で1割を下回り、2年連続で前年から縮小した。「信用組合」はシェア2.46%で、3年ぶりにシェア低下の動きが止まった。
一方で、「ネット銀行」が、他業態と比べて大幅にシェアを広げている。
ネット銀行のシェアは0.17%で、前年比0.03ポイントの増加だった。企業数で約2500社に達した。10年前から企業数で5.5倍、シェアで約6倍に拡大している。
帝国データバンクが、10年前に比べて「どの業態から流入したか」を分析したところ、最も多いのは「都市銀行」で36.45%、「地方銀行」が26.17%、「信用金庫」の15.89%などが続いた。
コロナ禍で、企業の入金方法などが対面からインターネットバンキングなどに変化しているなか、決済手数料や基本利用料の低さを背景に、ネット銀行の口座開設や切り替えを進める企業が増えていることがうかがえる。
その中で、楽天銀行がメインバンクの企業数で初めて1000社を突破した。
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)や住信SBIネット銀行をメインバンクとする企業も、それぞれ100社を超えており、楽天銀行を含む3行を中心にネット銀行全体のシェアを押し上げている。
銀行別トップは「不動」の三菱UFJ 「たましん」が増加企業数で全国最多
全国の企業が最も多く「メインバンク」に選んだ銀行は、三菱UFJ銀行だった。
もっとも、企業数は9万5718社だったが、企業数、全国シェア(6.53%)ともに減っている。減少幅は2021年に続き、すべての金融機関で最大となっている。
2位は三井住友銀行の7万6880社。シェアは5.25%で、前年から0.08ポイント、企業数で約560社減った。3位のみずほ銀行も、シェアで0.06ポイント、企業数で400社を超えて減少した。
この結果、メガバンク3行をメインバンクとする企業数は前年比で約1800社、シェアにして0.25ポイント(3行の合計)の減少となり、前年に比べて減少幅は緩やかとなったものの、減少傾向が続いた。
一方、りそな銀行は企業数で3万753社、シェア2.10%、埼玉りそな銀行は1万7593 社、1.20%で、ともに企業数で増えた。
地銀・第二地銀では、北洋銀行の企業数が2万3965社で最多。次いで、福岡銀行の2万 2096社、千葉銀行の2万1422 社、西日本シティ銀行の2万777社と続く。
トップ10のうち、千葉銀行は最も企業数が増えた(前年比298社増)。また、全体で最も企業数が増えたのは多摩信用金庫(東京都立川市)の7212社で、前年から352社も増加した。上位60行・庫をみても、300社を超える増加幅となったのは、多摩信金と宮崎銀行(9519社、313社増)の2行庫だけだった。
県内シェア6割超の地銀、十八親和、紀陽、山陰合同
人口減少やマイナス金利政策による貸出金利の低下など、銀行は厳しい経営環境が続くなか、地銀・第二地銀などで再編の動きが活発化している。
この10月には、愛知銀行と中京銀行による持ち株会社「あいちフィナンシャルグループ」が発足。11月には、ふくおかフィナンシャルグループと福岡中央銀行が経営統合に向けて基本合意した。それにより、グループ最大の経営基盤となる福岡県下で勢力を拡大させる。
1行が単独過半数のシェアを有する地銀をみると、最も高いのは長崎県の十八親和銀行で、県内シェアは84.3%を占めた。前年から0.04ポイントの増加だ。2番目に高い和歌山県の紀陽銀行(県内シェア63.52%)を、20ポイントを超えて上回り、1行単独シェアとしては全国的にみても極めて高い。
3位は、島根県の山陰合同銀行で県内シェアは61.97%。奈良県の南都銀行の61.2%、愛媛県の伊予銀行(60.28%)、宮崎県の宮崎銀行(60.02%)と続き、この6行が単独で県内シェアが6割を超えた。
地銀の経営統合でシェア上昇 「八十二+長野」も6割超え
1行が単独過半数のシェアを有する都道府県は合計で20にのぼる。
前年と比べて変化はなかったが、すでに経営統合が発表されている青森県(青森銀行とみちのく銀行、シェア70.51%)、福井県(福井銀行と福邦銀行、シェア55.12%)を加えると、単独過半数シェアの地銀を有する都道府県は合計で22になる。
愛知県で経営統合した愛知銀行と中京銀行のシェアの合計は約1割にとどまるが、県内トップシェアの三菱UFJ銀行に次ぐ県内2番手の規模となる。2023年6月1日をメドに経営統合する長野県の八十二銀行と長野銀行(61.62%)は、八十二銀行単独で県内シェア50%を超える。
一方、福岡県における福岡銀行と福岡中央銀行のシェア合計は 38.37%にとどまった。
帝国データバンクは、
「地域金融機関に求められる役割がさまざまな場面で増えるなか、相次ぐ経営統合や県内トップ行による寡占化は『借り手』からは手数料の引き上げや、店舗の統廃合に伴う利便性の悪化、競争低下による融資への悪影響を心配する声も少なくない。
一方で、低コストでの送金や口座維持手数料の無料化など利便性の高い決済機能面を強みに、ネット銀行が店舗型金融機関の新たな受け皿となりつつあるほか、他の地域から『越境』してサービスを提供する金融機関も多く、地域を問わないネット銀行を含め、金融機関の選択肢が増えている」
と指摘する。
今後、企業のメインバンクや、それによって銀行のシェアが大きく変化していく可能性がある。
企業のメインバンクにじわり変化...ネット銀行が急伸、地銀の「単独過半シェア」は22行へ - J-CASTニュース
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