デジタル化やグローバル化など、ビジネスを取り巻く環境の変化はますます勢いを増しています。だからこそ “いま” ビジネスパーソンに必要なのは、変化を受け入れ適応していく能力=「変化対応力」なのだとか。
しかし、そうした状況を不安に思いながらも、なかには変わりたいけれど変われない人、変わりたくないと考える人もいるかもしれません。そこで今回は、あえて積極的に変わろうとしなくても、自然と変化対応力が身につく “ちょっとした習慣” を紹介します。
「変化対応力」とは何か
株式会社マネジメントサービスセンター シニアコンサルタントの宮島寛之氏は、タイトルに “ビジネス激変時代” という言葉を掲げたインタビューのなかで、こう述べています。
今のビジネス環境の大きな特徴の一つとして、先行きの不透明さが挙げられます。10年後、何が正解だったかは誰にもわからないため、スピード感を持って物事を進め、短いスパンでチャレンジと検証を繰り返すことが欠かせません。
(引用元:HRプロ|ビジネス激変時代、経営戦略と採用戦略をいかに合致させるか~ビジネスを成功に導くビジネス・ドライバーとコンピテンシーを特定する~)
そうした背景があるからでしょうか、 社会人向けオンライン学習コミュニティの「Schoo」や、クラウド型ビジネスチャットツールの「Chatwork」など、いまの時代にフィットしたサービスを提供する企業はこぞって、変化対応力の必要性を訴えています。「Schoo」法人・企業向けサービスの社員育成コラムによれば、
変化対応力とは、環境の移り変わりに素早く、かつ柔軟に対応する能力
(引用元:Schoo|変化対応力とは?人材・組織に止められる理由や高める方法を解説)
とのこと。
一方で、現在リクルートワークス研究所 客員研究員/株式会社エクサウィザーズ「はたらくAI&DX研究所」所長を務める石原直子氏は、2021年の資料のなかで(当時はリクルートワークス研究所 主幹研究員/人事研究センター長)
――企業のデジタル変革に際し、組織と個人がデジタルスキルを獲得する過程で、デジタルスキル以外の能力も獲得できる――といった内容を説明しています。そのなかのひとつがアダプタビリティなのだとか。石原氏によれば、
アダプタビリティは、変化対応力とも訳されるが、変化を受け入れ、自らも変わろうとする“意志”を含む言葉である
(引用元:リクルートワークス研究所|リスキリング デジタル時代の人材戦略)
とのこと。じつは先の「Schoo」によると、変化対応力が高い組織では「自律型人材が活躍している」といいます(カギカッコ内、前出の「Schoo」社員育成コラムより)。
これらの内容は、変化対応力という能力が単に “順応性の高さ” を示すものではなく、自ら立てた規範に従い、明確な意思をもって変化に対応していける能力であることを、示唆しているのではないでしょうか。
「変化対応力」がなぜ必要なのか
前出の「Schoo」法人・企業向けサービスの社員育成コラムによれば、いまビジネスシーンにおいて変化対応力が求められる理由は、大きく分けて以下の3つが挙げられるそうです。
- 働き方やITツールの変化
- 求められるスキルの多様化
- VUCAの時代であること
(引用元:Schoo|変化対応力とは?人材・組織に止められる理由や高める方法を解説)
同コラムの説明によれば、これらは、いわゆるリモートワークの普及による働き方の変化、デジタル技術の発展によるビジネスモデルの変化、先行きが不透明で予測が難しい時代であること(VUCAの時代という)を指しています。
「変化対応力」を高めるには
そうしたことから「Chatwork」は、変化対応力を高める方法として「固定観念や先入観を捨てる」「自己肯定感を高める」「フィードバックをもらう」「傾聴の姿勢を持つ」といった4つを挙げています。
(カギカッコ内引用元:Chatwork|変化対応力とは?適応力を高める方法やメリットについて解説)
しかし、上記4つの実現自体がなかなか難しそうな印象です。それなら小さな一歩でも、より確実にそれらの実現へと近づいていける、ちょっとした習慣を身につけてしまいましょう。ふたつに分けて説明します。
1. 十人十色を眺める
“ある心構え” をもったうえで、他者の意見や感想を眺めてみる習慣は、無自覚の固定観念や先入観を捨てる助けになるかもしれません。そのカギは、クリティカルシンキング(本当にそれが正しいのかどうか、思い込みや偏見はないかどうか疑い、客観的に分析する思考)です。
NLPトレーナー・コーチの今西正和氏が講師を務めるクリティカルシンキングの研修ページ(「企業研修.com」内・2019年4月9日の情報)には、クリティカルシンキングに期待される効果が次のように説明されています。
・前例や固定観念に縛られることなく、多面的に物事を見ることができるようになり、新しい仕事の仕方や考え方を生み出すことができるようになる。
(引用元:企業研修.com|クリティカルシンキング~情報や物事の本質を見抜く力を養う~)
そのクリティカルシンキングを鍛える方法は、株式会社人材研究所・代表取締役社長の曽和利光氏が、“第三者から偏りを指摘してもらうことが確実だ” としながら、こうも続けています。
指摘してもらうのが難しければ、同じものを見てどんな感想を持つか、周りとすり合わせて意見の違いを洗い出してみるといいでしょう。
(引用元:リクナビNEXTジャーナル|クリティカルシンキングとは?仕事で役立つ理由と鍛え方を紹介)
それなら、本でも漫画でも、映画でもドラマでも、アート作品でもいいので、同じものを読んだ(鑑賞した)人に、どう感じたか聞いてみればいいのです。ネット上のレビューを読むだけでもいいかもしれません。ただし、その際には自分と同じ意見を探すのではなく、「十人十色、基本的には誰の考えも一致していない」という心構えで、それを行なうことが大切です。
そうして「十人十色」を眺める習慣は、自分が当たり前だと思っていたことを少し疑い、思案してみるクセを与えてくれるのではないでしょうか。つまり、クリティカルシンキングが鍛えられるわけです。それが固定観念や先入観を捨てるきっかけとなるはず。
また、いかに人々の感じ方や考え方が多様であるか認識することで、「フィードバックをもらう」「傾聴の姿勢を持つ」こともスムーズになるでしょう。これなら変化対応力の高まりも期待できそうです。
2. 毎日、何かを書く
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の、前野隆司氏監修による「みんチャレブログ」の記事によれば、自己肯定感を高めるためには毎日何か書く習慣をもつといいそうです。同記事によれば、
日記や自分の考えを書くことを日課にすると、自分を客観的に見ることができるようになります。
とのこと。具体的には、
箇条書きでいいので、その日頑張ったりできたことを3つ
書くことや(いわゆる「できたこと日記」)、
自分の思考や感情をひたすら書き出す
ことがいいのだとか(エクスプレッシブライティングを指す)。
(引用元:みんチャレブログ|自己肯定感を高める習慣とは?誰にでもできる7つの習慣と継続する方法)
たとえば前者なら、「今日は頑張って棚の上を掃除した」「思ったより仕事の見通しがついた」といったことでいいわけです。
後者の場合は、なんでも頭に浮かんだことを書き出せばいいので、たとえば「私には強みがない」「最近集中できないのは〇〇のせいかな」といった感じでしょうか。
いずれも1日の終わり、就寝前に行なうことで、意外と自分は頑張っている・やればできると思える――あるいは吐き出して客観的になり、頭を整理できるので、不安やストレス解消にもなるそうです。
ちなみに自己肯定感とは、ありのままの自分を認める感覚のこと。前野氏はSTUDY HACKERのインタビューで、長続きする幸せをもたらす因子のひとつが「ありのままに」であると述べ、その因子についてこう表現しています。
他人と自分を比較することなく、自分らしさを追求して磨いていくこと
(引用元:STUDY HACKER|カネ・モノ・地位で得た幸せは長続きしない。本当の幸せをつかむには “この4つ” が重要だ)
つまり、これまでの内容をつなげながら解釈していくと、自己肯定感を高めるということは、ありのままの自分を認める感覚の強化であり、それは他者との比較をやめて、「自分らしさを追求する自分」を認めることでもある。それが「変化対応力」を身につけることにもつながるわけです。
自分らしさと変化は一見相反するように見えますが、自分が確固たるものになれば、環境の変化にも揺らぐことなく、意思をもって対応できる、ということなのかもしれません。そのためにもぜひ、毎日書く習慣を取り入れてみてください。
***
自分らしさを大切にしながら、目まぐるしい変化にも対応できる能力が、うまく身につくといいですね。
(参考)
HRプロ|ビジネス激変時代、経営戦略と採用戦略をいかに合致させるか~ビジネスを成功に導くビジネス・ドライバーとコンピテンシーを特定する~
STUDY HACKER|カネ・モノ・地位で得た幸せは長続きしない。本当の幸せをつかむには “この4つ” が重要だ
リクナビNEXTジャーナル|クリティカルシンキングとは?仕事で役立つ理由と鍛え方を紹介
みんチャレブログ|自己肯定感を高める習慣とは?誰にでもできる7つの習慣と継続する方法
企業研修.com|クリティカルシンキング~情報や物事の本質を見抜く力を養う~
Schoo|変化対応力とは?人材・組織に止められる理由や高める方法を解説
Chatwork|変化対応力とは?適応力を高める方法やメリットについて解説
リクルートワークス研究所|リスキリング デジタル時代の人材戦略
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
あえて変わろうとしなくても自然と「変化対応力」が身につく、2つの “ちょっとした習慣” - Study Hacker
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