ブロンズウォッチの経年変化にとどまらない魅力をさまざまな視点から見ていきたい。
今回テーマは「ブロンズウォッチの経年変化を最適に得るための方法」「ブロンズウォッチに経年変化を与えすぎてしまった場合の対処法」について紹介する。
https://www.webchronos.net/specification/53930/
アンモニアの気体と塩水で経年変化を促したオリスの「カール・ブラシア」。
Originally published on watchtime.com
Text by Justin Mastine-Frost
2022年7月12日掲載記事
ブロンズウォッチの経年変化を最適に得るための方法
「なぜ、この10年ほどでブロンズがこれほどの人気を博したのか?」(https://www.webchronos.net/features/82137/)で記述したように、ブロンズウォッチに求められる特性として経年変化がある。繰り返しになるが、これは金属の組成に関わるものであり、時計ブランドが用いる保護コーティングによってその差も現われる。
オリスの「カール・ブラシア」は色が早い段階で濃く落ち着いた感じになり、チューダーやパネライ、モンブランのブロンズモデルはゆったりと時間を経て変色が感じられた。空気中の水分、海水、および気象状況の影響を日々ブロンズウォッチは受けるが、ブロンズ素材のファンは、それ以外の多くの技を用いてこの変化を早めることができることを知っている。
極度な青みを帯びたオリス「カール・ブラシア」。
気体で燻して経年変化を得る
ブロンズを8から24時間、化学物質の気体(作用には差がある)にさらすことにより、ブロンズウォッチの色調に変化が及ぼされる。家庭でできる簡単な方法を探している人のために、白酢、リンゴ酢などが挙げられるだろう。代替案としてアンモニアもあるので、もう少し強い効果を期待したい場合は考慮に入れてほしい。
揮発した酢に何時間もさらすことによって、風合いのある模様に仕上がったゾディアックの「スーパー シーウルフ 68」。もともとはマイクロブラスト仕上げの淡いイエローカラーのケースであった。撮影/Justin Mastine-Frost
実際の工程を紹介する。ブロンズウォッチを密封可能な容器に入れて、底から離して液体と時計を付着させないようにする(作業前にストラップは外しておく)。目的は、時計を液体と物理的に触れさせないようにしつつ、容器の中に気体とともに密封することである。最初の数時間はやかんが沸くのを待つようなもので、何も変化は起こらない。しばらく経つと、気体がその魔力を発揮し、あまり長く待たないうちにブロンズの光沢が、黒ずんだ外観をまとい始める。
写真で紹介したゾディアックの「スーパー シーウルフ 68」は、保護コーティングが施されていたため通常より長く時間がかかったが、蒸発する気体に24時間、3日間連続でさらしたことで写真のな結果を得ている。このような長時間にわたる場合、途中でぬるま湯やクロスでクリーニングすることにより、全体的に統一感のある経年変化を得ることができる。
硫黄を用いるメリットとデメリット
硫黄を使って経年変化を故意に発生させることには利点と落とし穴があるが、酢による作用同様、非常に興味深い結果を引き出すことができる。気体による「準備して待つ」工程とは異なり、結果がずっと早く出るのだ。それと同時に、より一層の注意が必要となる。いろいろな方法があるが、「硫黄ジェル」は最もシンプルで効果的な方法である。
エレガントな経年変化を得た、パネライのブロンズモデル。
エイジングを促すための準備として、まずふたつのボウルを用意するところから始める。ひとつには少量の硫黄ジェルを入れた水を2カップ、もうひとつには同量の水にティースプーン2杯の重曹を混ぜたものを入れておく。この作業では、ゴム手袋の着用を勧める。ぬるま湯で時計ケースを洗浄したあと、水と硫黄の混合液に静かに沈める。沈めると急速にブロンズは変化し始め、液体から引き上げた後もその変色は継続する。好みの色合いになったらすぐに、水と重曹の混合液に浸し、金属を安定させる。
この方法を試みたことのある愛好家によると、この方法を短いサイクルで繰り返すことで、ブロンズウォッチがゆっくりとダークカラーになり、好みの経年変化に到達することができる。つまり「最初から最高を目指す」のではなく、徐々にベストを狙うことが良いということであった。ありがたいことにいつも停止ボタンを押すことができるということである。
ブロンズウォッチに経年変化を与えすぎてしまった場合の対処法
ブロンズウォッチに工場出荷時のような外観の維持を求める人、また、経年変化をやり過ぎてしまった人などのために、いくつか比較的簡単にブロンズをクリーニングできる方法を紹介する。
ゼニス「パイロット クロノメトロ TIPO CP-2 フライバック」は、市場に出回っている多くのブロンズモデルと異なり、ゼニスの製造元から直接、若干のエイジングが施された状態で届く。撮影/David Rosin
歯磨き粉、もしくはレモン汁+重曹でクリーニング
真鍮やその他の金属を洗浄するための市販品もあるが、我々はどの家庭にもあるものでうまくいく技を見つけた。
第2回目で登場したゾディアックの「スーパー シーウルフ 68」。年季の入ったようなサビをまとい、程よい経年変化を経たこちらのケースも、適切なクリーニングを施すことで、元の輝きを取り戻すことができる。撮影/Justin Mastine-Frost
最もシンプルなものは、歯磨き粉である。歯磨き粉を用いた方法は少し手間はかかるが、わざわざ買い物に行くことなく始められるものだろう。ブロンズケースに歯磨き粉を塗り、一定の時間(概ね5分から10分)放置する。その後、歯ブラシで強くこすると、ブロンズウォッチに適切な輝きが戻るだろう。
その他に重曹とレモン果汁から作るペーストも、ブロンズの輝きを取り戻すのに効果的と立証されている。少量の重曹に、柔らかなペーストを作るのに十分なだけレモン汁を垂らす。それをブロンズウォッチに均一に塗布し、20分から30分程度放置した後に布でこするだけで、多くの場合うまくいく。歯磨き粉と同じように、一度できれいにならなかった場合は、2度、3度と繰り返してみてほしい。
ブロンズの経年変化を最適にコントロールする | 高級腕時計専門誌クロノス日本版 - クロノス日本版
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