最下位からの「反撃」のカギは“化学変化”にあり-。今季から新たにDeNAの野手担当のコーチに加わった石井琢朗野手総合コーチ(51)鈴木尚典打撃コーチ(49)相川亮二バッテリーコーチ(45)が、シーズン開幕を前に“ガチ”対談した。ともに戦うのは08年以来14年ぶりだが、「ハマの男たち」にブランクは一切なし。オープン戦を3位で終えたチームへの思いと現状、三浦監督への思い、そして決意を語り合った。【取材・構成=久保賢吾】
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ともにベイスターズのユニホームに袖を通した08年から14年。親会社はDeNAへと変わり、それぞれが移籍、グラウンド外での業務など、おのおのの道を歩み、再び集まった。
石井コーチ(以下石) みんな当時のままですね。お互い年を取って、ちょっと肉がついてってくらいで(笑い)。スー(鈴木)はDeNAでいろんな部署を経験して、独立リーグの監督をして、リポートの書き方はすごく成長してるね。
鈴木コーチ(以下鈴) 先輩、そこですか!
相川コーチ(以下相) おふたりとも選手時代から情熱を持ってやられていたので、本質的には変わらないですよね。
98年に日本一を達成した時と同様、切り込む石井コーチ。話題は昨年の秋季トレーニングで捕手陣について、相川コーチが「選手はいいです。できなかったら僕の責任」と話したことに。
石 そんなこと言ったの? すごいな! でも、いいね、その気概が。
相 覚悟してますんで。たぶんバッテリーとか、そういう部分が弱いっていうのは、みんなに言われてるところなんで、責任を持って戦いたいなと。
鈴 覚悟を持ってね。
相 はい。そう思ってます。
石 まじめか!
相 何を言えば、いいんですか(笑い)。
石 いや、いいんだよ。俺も覚悟を持って入ってきてる。
相 それこそ、石井さんの覚悟の方が僕なんかよりよっぽどすごいなと思ってますから。
石 何でよ?
相 いやー、覚悟を感じます。毎日見ていて。
石 使命感は持ってるよ。自分の中で横浜を集大成と考えてる部分はあるから、やっぱり、「どうにかしたい」っていう気持ちは強いよね。
周囲からは、コーチ人事が今オフの大きな補強との声も聞かれる。
鈴 プレッシャーはありますよ、正直。でも、本当に優勝できる戦力がそろってると思うんで、十分チャンスがあるなと。
相 僕は選手で優勝していないので、その分(巨人の)コーチ3年間で勝つ苦しさ、難しさ、大変さを感じた。これをまた今の選手、ファンと一緒に目標を達成するために苦しみながらやっていきたいです。
石 注目されることですごくハードルを上げられてるような…。でも亮二も隆さん(斎藤コーチ)も含めて、外から来た人間しか分からないことってすごくあると思うんで。うまく融合させて、いい方に化学変化していければ。どういう化学変化を起こすかは分からないですけど(笑い)。
三浦監督は「変わらないと」と全員に変化を求める。打線では「チーム打撃」の意識が浸透し、ここまでは“化学変化”が表れている。コーチ陣の手応えは。
石 僕1人で変えようと思っても変えられないけど、取り組んできたことが出せてるのはあるかなと。でも、そうは甘くはないぞっていうのはやっぱりある。本当に浸透して、変わっていくのは2、3年後くらいになるんじゃないかなって。ですけど、いい選手がそろっているし、うまくはまってくれれば今年ドンッていく可能性はあります。
鈴 琢朗さんが言った通りで、そんな甘くはない。期待半分と不安半分。うまくみんながまとまって、点を取る喜び、勝つ喜びを覚えたり、感じてくれたら、チームはまとまる。98年に優勝した時もそうでしたけど、ガッとまとまるチームになれば。
相 キャッチャーで言うと、勝ちに飢えてるなとすごく感じます。戦うマインドは高くなってますし、配球の部分で勝負してくれる場面も出てきている。守りに入るんではなくて、どんどん挑戦して、勝負してもらいたいです。
3コーチともに現役時代は、三浦監督と多くの時間を共有してきた。
石 現役の時は背中を見て守ってましたけど、今は背中を押してあげられるような、そんな感じでいます。なるべく、前に出ていかないように後ろからしっかり支えたいっていう気持ちが強い。番長って言われてますけど、本物の番長にしてあげたいですね。
鈴 少しでも監督の力になって、サポートしてあげないといけないなという思いが強いです。冗談を言い合ったりするのも必要だと思いますし、少しでも楽にさせてあげたいなと。
相 選手時代は先輩で、エースで、いろんなことを教わった。他チームでいろんなことを経験してきたものをやっと返す時が来たのかなと思ってるので、数多く勝つために僕の考えや思いをお伝えできれば。
予定の30分間は、あっという間に過ぎた。
石 えっ、もう時間? 最後にいいですか。僕は他球団で優勝経験はしましたけど、日本一になれていないので日本一になるために帰ってきましたから。
秋には、果たしてどんな“化学変化”が起きているのだろうか-。
【DeNAの野手陣の化学変化】
<1>知野が練習試合で6打席連続安打 2月20日の巨人戦で3方向へ4打席連続安打を放ち、同22日広島戦の2打席目まで安打を重ねた。豪快な打撃が売りだが、今季は中堅から逆方向への打撃で幅が広がった。
<2>得点パターンの増加 「チーム打撃」の意識を浸透させ、進塁打も重要視。2月16日広島戦の2回には、四球から盗塁と犠打で三塁に進めて犠飛。無安打で得点を挙げた。オープン戦は7犠飛を記録。
<3>練習量の増加 春季キャンプでは、朝の早出練習から夕方の居残りまでスイング量が秋季キャンプ並まで増えた。1日1000スイングはざらで、室内練習場では午後7時ごろまで打球音が響いた。
◆石井琢朗(いしい・たくろう)1970年(昭45)8月25日、栃木県佐野市生まれ。足利工から88年ドラフト外で大洋(現DeNA)入団。91年秋に投手から野手転向。98年には横浜の38年ぶり日本一に貢献。09年から広島でプレー。12年に現役引退。最多安打2回、盗塁王4回。通算2432安打、102本塁打、670打点、打率2割8分2厘。引退後は13~17年広島、18、19年ヤクルトコーチ。20年巨人コーチ。現役時は174センチ、78キロ。右投げ左打ち。
◆鈴木尚典(すずき・たかのり)1972年(昭47)4月10日生まれ、浜松市生まれ。横浜から90年ドラフト4位で大洋(現DeNA)入団。97、98年に2年連続で首位打者、ベストナイン。98年に西武を下した日本シリーズでMVP。通算146本塁打、700打点、打率3割3厘。引退後は09、10年に2軍コーチ。11年から球団職員などを務め、20年に独立リーグのBC・神奈川監督に就任。リーグで初めて参入初年度に優勝した。現役時は186センチ、88キロ。右投げ左打ち。
◆相川亮二(あいかわ・りょうじ)1976年(昭51)7月11日、千葉県生まれ。東京学館から94年ドラフト5位で横浜(現DeNA)入団。FA権を2度行使し、09年からヤクルト、15年から巨人でプレー。17年限りで現役引退し、19~21年は巨人バッテリーコーチ。通算成績は1508試合、1150安打、69本塁打、475打点、打率2割6分。09、11年盗塁阻止率リーグ1位。04年アテネ五輪、06、13年WBC日本代表。現役時は183センチ、86キロ。右投げ右打ち。
DeNA最下位から反撃のカギは化学変化にあり 石井琢朗、鈴木尚典、相川亮二、新任3コーチ対談 - ニッカンスポーツ
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