ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会に、FeelWorksの代表取締役で、青山学院大学兼任講師である前川孝雄氏が登場。これまでに手掛けた大手企業の人材育成支援の経験やノウハウ、および2021年9月発行の著書『人を活かす経営の新常識(FeelWorks)』など、これまでに発行した35冊の書籍に基づいて、『終身雇用は人を大切にしているのか?「人を活かす経営の新常識」』をテーマに講演した。
霞が関では2019年の早期退職が6年前の4倍以上に
「“働きがい”は、古くて新しいキーワードですが、いまの日本には非常に大切なキーワードです」と前川氏は話す。世界仕事満足度調査において、日本は仕事や働きがいなどに関する満足度が極端に低いという結果が報告されており、大企業や大きな組織において早期離職が止まらない状況である。エリートの代名詞であった国家公務員の早期離職ですら止まらないという。
「霞が関では、20代総合職の2019年の早期退職が、6年前の4倍以上に増えていることがニュースになりました。人事院では、新型コロナウイルス感染症の拡大により、地方志向が高まったり、ワークライフバランスを重視したりということを理由に挙げていますが、これまでの経験からこの認識はずれていると考えています」(前川氏)。
国家公務員の意識調査でも、離職を考える理由は、「長時間労働で仕事と家庭の両立が難しい」という男性は34%、女性は47%ですが、「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」という男性が49%と突出、同じく女性でも44%と報告されており、自らの成長が期待できることが重視されている。
ダイバーシティに関しても、人生におけるキャリアの位置付けや、家族形態も変化してきている。例えば平成の半ばまでは、専業主婦世帯が多数派だったが、現在は共働き世帯が2倍の時代になっている。女性の就業率は、30代〜40代の子育てが重なる時期に就業率が下がる傾向があった。
「この状況を改善するために、政府もさまざまな施策を実施してきました。これにより、子育て世代の就業率が上がったように思われましたが、非正規社員が増えただけで、正社員だけで見ると相変わらず下がっています。組織が変わらないため、多くの女性にとって、人生設計、キャリア設計は相変わらず難しい状況です」(前川氏)。
一方、ミドル/シニア層に関しても、働く年数が変化し、70歳現役時代が現実的になっている。現状では、60歳定年で、65歳まで雇用延長が主流だが、改正高年齢者雇用安定法が2021年4月より施行されたことで70歳までの就業確保が企業に努力義務化された。そこで「学び直し」が必要になるが、年代別で見ると20代の方が自己啓発に熱心で、50代はそれほどでもない。
「定年はリタイアではなく、いまや70代でも現役が一般的になりつつあります。そこで会社依存ではない、自分自身のキャリアビジョンを持つことが重要です。若い人はダイレクトに反応し、すでに変わり始めています。人気アニメ「鬼滅の刃」に“生殺与奪の権を他人に握らせるな!”というセリフがありますが、まさに自分の人生は会社任せではなく自身で切り拓かなければならない時代に入ったのです」と話している。
「働きがい」こそが現場改革の原動力になる
仕事は生活の糧だが、50代・60代以降になってくると、経済面以上に「働きがい」や「社会参画」が重要になる。働くことで社会との接点ができ、生きがいにつながる。特に50代は役職定年をもうける会社もあり、会社員のキャリアとしては下り坂にさしかかる年代。しかし定年はゴールではなく第2のスタートである。そこに向け、意識を切り替えて学び、チャレンジすることが大事だ。
前川氏は、「400社以上で『上司力研修』シリーズを提供して気が付いたのは、40代、50代の課長、部長クラスは、目の前の仕事をこなすことで余裕がなく、自分自身のキャリアを考えられていないということです。しかし、上司が自分のキャリアの夢を描き、チャレンジする姿を見せることが、もっとも職場を元気にすることにつながるのです」と話す。
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終身雇用の保証より、どれだけ変化しても活躍できる人材の育成が人を活かす経営の新常識 - ITmedia エグゼクティブ
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