■要旨
- コロナ禍における消費内訳の変化を見ると、食関連では外食が大幅に減る一方、パスタや肉、出前などの支出が増え、食事では手軽さと質の高さの需要が増している。外食需要が中食へシフトしているが、コロナ前から中食市場は共働き世帯の増加などで拡大していた。感染状況が収束へ向かい、行動制限が緩和されたポストコロナでは外食需要は徐々に回復するだろうが、テレワークの浸透で人の流れが変わることで、店舗立地には工夫が求められる。
- 交通や旅行、レジャーなどの外出型消費の支出は感染状況と連動し、コロナ前の水準を下回る。ポストコロナでは回復基調を示すだろうが、テレワークで通勤需要が減るため、交通機関では新たな領域での展開や業態転換を合わせた検討が求められる。旅行やレジャーについては、コロナ前から、若い世代において娯楽の多様化等による相対的な興味関心の低下が課題として指摘されており、引き続き創意工夫が求められる。
- パソコンなどのテレワーク関連製品は国民1人当たり10万円の「特別定額給付金」の後押しもあり、支出額が増えている。耐久消費財であるため、購入後数年は落ち着きが見られるだろうが、今後も一定のサイクルでの需要増が期待できる。一方、背広服などのオフィス着の需要は大幅に減っている。コロナ前からオフィス着のカジュアル化の流れはあったが、ポストコロナでは一層、アパレル製品のラインナップではカジュアル化の流れが強まるだろう。
- ゲーム関連の支出は2020年3月の全国一斉休校や感染が再拡大した夏休みなど、子どもの生活と連動して増えている。また、デジタル化の進展にコロナ禍による需要増が加わり、電子書籍などのデジタル娯楽の支出が増えている。今後はシニア層でもスマートフォン利用率などが高まることで、電子書籍などは幅広い層に需要が広がる可能性がある。
- コロナ禍における個人消費は巣ごもり需要に加えて、対面サービスのオンライン対応をはじめとした企業の創意工夫に支えられた。しかし、やはり従来から支出額の大きな外出型消費の大幅な減少が個人消費全体へ与える影響は大きい。欧米では感染力の強い変異種による感染拡大によって、ワクチンの接種証明や陰性証明を活用する動きに加えて、米国では3回目のワクチン接種が予定されている。日本政府には、まずは迅速にワクチン接種を進めること、また、各国の対策から学びを得て、国民を守りながら経済活動との両立を効果的に図る政策を求めたい。
■目次
1――はじめに
2――個人消費全体の状況
3――消費内訳の変化
1|食関連
2|外出関連
3|対面型接触系サービス
4|デジタル関連
5|その他
4――おわりに
コロナ禍における家計消費の変化~ウィズコロナの現状分析とポストコロナの考察 - 株式会社ニッセイ基礎研究所
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