「ふるさと納税」の制度を活用し、自らが住む自治体に寄付をする東京都民が増えている。地方の特産品などの返礼品目当てでなく「新型コロナウイルス禍で苦しむ地元の支援に使う」との地元自治体の方針に賛同した寄付だ。世田谷、練馬など、2020年度のふるさと納税の受け入れ額が過去最高になる区も相次いでいる。(坂田奈央)
世田谷区は20年度のふるさと納税による寄付が過去最高の約1億7000万円に達した。その約4割を占めたのが、20年4月に募集を始めた「新型コロナウイルスをともに乗りこえる寄付金」への寄付だった。
必要な人が速やかにPCR検査を受けられる体制の整備などを訴え、区が始めた制度で、これに賛同し、ふるさと納税として寄付をした人のうち約3分の2が世田谷区民だった。
ふるさと納税は原則、応援したい自治体に寄付すると、寄付額から2000円を差し引いた分が住民税と所得税から減額される制度。寄付を受けた自治体は地元の特産物を返礼品に贈ることが多く、これを目当てに寄付をする都心の住民が増加。東京の自治体は近年、税収減に悩まされている。
だが自らが住む自治体へのふるさと納税も元々可能。返礼品は受け取れないが、税控除は他の自治体への寄付と同様に受けられる。寄付をした人は使途を指定できるケースが多く、世田谷区のような「コロナ対策」が共感を呼んでいる。
◆税収減に一定の歯止め
世田谷区は20年度、約1210億円の特別区民税収額(予算ベース)に対し、自治体への寄付による減収額が56億円に達した。21年度は減収額が64億円に上る見通し。ただ寄付の増加で減収に一定の歯止めがかかり、担当課の高井浩幸課長は「寄付のおかげでPCR検査の拡充が実現した。大変ありがたい」と話した。
江東区も昨年6月、使い道を「新型コロナウイルス感染症対策のために」と指定し寄付を募集。防護服の購入やマスク・消毒液などの備蓄を訴え、この事業への寄付がふるさと納税による寄付全体の約68%を占めた。足立区も比較可能な14年度以降、過去最高の寄付を集めた。
ふるさと納税仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京)の田中絵里香さんは「多くの自治体がコロナ対策としてふるさと納税を活用し、使い道を意識した寄付の輪が広がる経験をした。コロナ後もこうした動きは続く」と予測。近畿大の鈴木善充准教授も「寄付金が確実にコロナ対策などの目的に使われるのなら、返礼品なしでもふるさと納税をする人は多いことが分かった」と指摘した。
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ふるさと納税に変化の兆し 都民「返礼品目当て」より「コロナ対策に」 世田谷区は寄付額最高に - 東京新聞
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