ガートナー ジャパンは、6月21~22日に「ガートナー アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット」をオンラインで開催した。オープニングの基調講演では、ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのDaryl Plummer氏が、「コンポーザビリティーという『フィットネス習慣』を通して靭(しな)やかさを身に付ける」と題し、企業が変化への対応能力を獲得していく方策を指南した。
コロナ禍でオフィス勤務が強制的に在宅勤務になったように、企業は好むと好まざるとにかかわらず、変化に対応しなければ生き残れない。Plummer氏は、そうした能力を「レジリエンス(回復力や復元性と訳される)」とし、「『すぐに立ち上がること』『新しいものになること』の2種類の意味がある。しかし、いずれも『元に戻る』ことでない。企業の場合、テクノロジーによりビジネスのレジリエンスを獲得できる」と述べる。
講演でPlummer氏は、企業がビジネスのレジリエンスを獲得していく方法を、人間のフィットネスに例えながら示した。人は、肉体と精神に柔軟性、適応性、俊敏性を獲得していれば、過酷な状態下でも変化へ粘り強く対応していけるという。これらは急に体得できるわけではなく、日々のフィットネスのように、習慣によって獲得できるというのが、フィットネスが趣味というPlummer氏の持論であるようだ。
企業をさまざまな人々が集まる大きな有機構造体とみなせば、人体がフィットネスで変われるように、企業も日々の習慣付けにより変われるという。その習慣付けを、講演の題目にある「コンポーザビリティー」と表現している。
「コンポーザビリティー」は、日本語では「構成可能性」と訳される。Plummer氏の説明では、人体がさまざまな機能・役割を持つ細胞で構成され、人体が疲労、老朽、損害に遭っても細胞が新陳代謝することで健康を維持し、時にはそれらをもたらす脅威などへの耐性を獲得する。日々のフィットネスを通じて新陳代謝も促される。企業の場合、「コンポーザビリティー」に該当するものは、ビジネス、アプリケーション、アーキテクチャー、テクノロジー、文化、プロセス、革新性、パートナーなど、ありとあらゆるものだとする。
企業がレジリエンスを獲得するには、まず「コンポーザビリティー」の概念を理解した上で、自社の「コンポーザビリティー」を実現するための構成要素(コンポジション)を見出す。コンポジションにより、企業は発見を通じてより多くの気づきを得ることができ、モジュールによって柔軟性を高め、オーケストレーションによって適応性をより良いものとし、自律的であることで意欲を高めてくれるという。
Plummer氏は、「コンポーザビリティー」による効果を例示した。例えば、コロナ禍では、感染対策や都市のロックダウンにより多くのフィットネスジムが閉鎖、倒産に追い込まれたが、オンライン配信などの方法で乗り切ったジムは、段階的なロックダウンの解除を通じてリアルな場を取り戻しつつある。そうしたジムは、オンライントレーニングを継続したことが、顧客の信頼を維持することにもつながったと説明する。
また、「コンポーザビリティー」によってレジリエンスを獲得している企業の例には、中国の海尓集団(ハイアール)を挙げた。ハイアールは、幾多の部門の独立性が極めて高いながら、グループ全体としての少数による自律性を併せ持つ経営体制の「マイクロエンタープライズ」が知られる。経済情勢や市場環境の変化に応じて部門間の結び付きも常に変化しながらビジネスモデルを変えている。Plummer氏は、ハイアールに限らず「コンポーザビリティー」を通じてどのような企業でも獲得できるとする。
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「コンポーザビリティー」で変化に強い企業体質となれ--ガートナー - ZDNet Japan
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