パブリッシャービジネスが大きな転換を求められる昨今、企業は新たな「メディアの提供価値」を模索している。
レシピ動画メディアのデリッシュキッチン(DELISH KICHEN)を運営するエブリー(every)もその1社だ。同社はここ数年、デジタルオリジンのパブリッシャーという枠を超え、ブランドやリテール企業に対し、オンライン/オフラインを跨いだソリューションを提供している。その中身はOMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインを融合させた考え方)の視点に基づいたものであり、アプリ内での認知獲得メニューをはじめ、店頭デジタルサイネージ、Webチラシの提供など多岐にわたる。また、現在エブリーはファーストパーティデータの収集も進めており、将来的にはそれらを独自のIDで統合し、食体験のあらゆるシーンにおける、最適なレコメンドの実現を目指しているという。
「食体験のデジタル化はまだ、あまり進んでいない。我々はOMOの視点でそこに切り込んでいきたいと考えている」。こう語るのは、エブリーの執行役員でDELISH KICHENカンパニー リテールソリューションズ事業部長の鵜飼勇人氏だ。同氏は、2021年3月25日に開催された「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT 2021」にて、「メディアの提供価値はどう変化していくべきか?:DELISH KITCHENの目指すOMOの世界観とは」と題されたセッションに登壇した。
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一気通貫した「食体験」の構築を支援
2015年にスタートしたデリッシュキッチンは、当初、食品関連のブランド企業などに向けた、広告ビジネスを中心にマネタイズを行っていた。だが同社は、事業を拡大していくなか、食体験全体をカバーする方向に舵を切る。
「食の購買体験はオンライン比率がまだ低く、ブランドやリテール企業が、一気通貫した顧客体験を設計することは難しい」と鵜飼氏。「逆にいえば、食品領域はまだデジタル化の余地がある」。
鵜飼氏によると、リテール企業の場合、チラシやオウンドメディア、そして実際の店頭で案内など、それぞれのプロモーションのポイントがバラバラになってしまっているケースが往々にしてあるという。エブリーはこうした諸課題に目を付けた。同社は現在、商品の購買や実際の調理も含めた「食体験」の構築を、オンライン/オフラインを跨いで支援すべく、ブランドやリテール企業に多様なリューションを提供している。
「デリッシュキッチンのアプリを活用した単発の解決策ではなく、企業の販売計画のところから入って『一緒に作っていきましょう』というスタンスが大切だ。消費者の購買体験を良いものにするためには、そうした上流の部分にも関与する必要がある」。
ソリューションの中身
エブリーがソリューション郡のひとつとして提供しているのが、店頭サイネージだ。これは、デジタルサイネージをスーパーや量販店の店頭に設置して、生活者にレシピコンテンツを届けるというもの。
鵜飼氏は、この「提案型メディア」を考案するに至った背景を、以下のように述べる。「そもそも7〜8割の生活者が、事前にレシピを決めていたとしても、商品の価格や、鮮度、品揃えをもとに、スーパーなどの店頭で意思決定をしていることがわかった。店頭サイネージのソリューションは、こうした状況を踏まえて、オンライン上だけでなくオフラインでのアプローチも実現すべく考案された」。
なおこのソリューションは、昨今のコロナ禍で店舗の滞在時間の制限が叫ばれるなか、「生活者の意思決定をサポートする」という点で、リテール企業から評価されているという。「特に、新型コロナウィルスが猛威を振るっているここ1〜2年は、店頭での提案型メディアがより支持されているのを肌で感じる」。
また、ブランド企業向けのソリューションにおいても、現在エブリーはアプリでの認知施策をはじめ、タイアップやクーポン、サイネージでの店頭プロモーションも含めた、フルファネルでの広告ソリューションを提供している。オンラインでのプロモーション施策が、実際どれほど店頭での購買に繋がっているか、多くのブランド企業が疑問としていたところではあるが、認知から購買までを一貫させることで、そのような課題もカバーできるという。
ファーストパーティデータの活用も
こうしたソリューションの質をさらに高めるべく、エブリーはファーストパーティデータの収集と活用も進めている。
現在エブリーは、実に緻密にユーザーデータを収集している。それは属性情報のみならず、動画のどの部分で脱落したのか、どんなレシピ動画を好んでいるのか、アプリの機能をどう利用したか、レシピを見て実際に来店したのか、どの店によく来店するのか、購買に至ったとして、それを調理したのかといった、細かな部分にまでおよぶ。また同社は、4月21日に「DELISH KITCHEN CONNECT(デリッシュキッチンコネクト)」なる広告主向けのソリューションをスタート。ファーストパーティデータをひとつのIDに紐付け、DELISH KITCHENのアプリ内における、広告配信やレコメンドのパーソナライズを進めている。
最後に鵜飼氏は、次のような言葉でセッションを締めくくった。「我々は、食体験のあらゆる局面おいて、パーソナライズされたレコメンドの実現を目指していく。データを取得するだけでなく、それをしっかり生活者の体験に還元していくことが重要だ」。
Written by 小野和哉、村上莞
Photo by Courtesy of エブリー(TOP)
Photo by 渡部幸和(人物)
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デリッシュキッチン の目指す、 OMO の世界観とは?:変化するメディアの提供価値 - DIGIDAY[日本版]
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