ベルギー・ブリュッセルにある欧州連合(EU)本部ビル
Photo: yves herman/Reutersジョー・バイデン米大統領は、好戦的な態度を強める中国に対抗するため、米国の伝統的な同盟国と協力したいと考えている。欧州連合(EU)が独自の道を歩もうとしている中、大西洋同盟を復活させる上で中国が一役買っている。
EU欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス委員(通商担当)は4日、AFP通信の取材で「われわれは現在、ある意味(中略)欧州委員会側からの政治的な働きかけを中断している」とし、「協定の批准を促す環境にない」と述べた。同氏が言及しているのは、欧州と中国が互いの市場へのアクセスを拡大することを目的とした「包括的投資協定」のことだ。
ジェイク・サリバン氏は、米大統領補佐官(国家安全保障担当)に就任する数週間前、この協定についてEUに「早期の協議」を要請した。欧州はこれに対し、中国との基本合意達成を発表することで応じた。しかし、この協定はまだ欧州議会とEU加盟27カ国首脳による承認が必要だ。
この手続きは3月、複雑さを増した。EUは新疆ウイグル自治区の人権侵害に関与した中国当局者4人に対し、制裁を科すことを発表。中国はこれを受け、中国共産党に批判的な欧州議会議員を含む欧州人に制裁を発動した。
批准投票をする当局者に制裁を科している国との協定を批准するのは難しい。しかし、アンゲラ・メルケル独首相は今もそれを試みている。同氏は先月、中国の習近平国家主席とエマニュエル・マクロン仏大統領とビデオ会談を行った。ドイツ側の声明は人権侵害について言及していなかった。フランス側は人権侵害が話題に出たことを後に明らかにしたが、メルケル氏は今年のドイツ総選挙前に協定を固めようと人権問題を目立たせないようにしている。
欧州は米国と同じく、中国との貿易問題を解決したがっており、これは理解できる。ドイツの昨年のモノの対中輸出額は1000億ユーロ(約13兆1600億円)近くに上る。貿易協定は理論上、自動車や通信、医療などの産業にビジネスチャンスをもたらす。
しかし、メルケル氏の「貿易を通じた変革」という理念――かつて米国が中国に期待したもの――は、もはや時代遅れだ。経済関係では、中国の往々にして略奪的な重商主義や知的財産権の窃盗、サイバー工作活動などを考慮する必要がある。中国は、昨年の欧州による米新政権に対する冷遇を地政学的な大勝利とみなした。
EU当局者の一人は4日、協議は「完全に中断されているわけではない」と言明し、「批准は状況の進展による」と述べた。メルケル氏とその仲間は、協定のために戦い続けるだろう。しかし、欧州議会やドイツの政界、欧州市民の間では懐疑的な見方が広がっている。欠陥のある協定の成立に苦闘するよりも、欧州はグループを組み直し、米国や他の志を同じくする国々と貿易で統一戦線を張って中国にアプローチする方が得策だろう。
「米国人は、他の全ての可能性が尽くされた後は、常に正しいことをすると信頼できる」というウィンストン・チャーチル元英首相の有名な言葉がある。チャーチルが本当にこれを言ったかどうかは分からないが、バイデン氏が欧州の友人に対して同じように感じているとしても、理解できる。
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