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Saturday, May 15, 2021

「太陽を味方に」刻々と変化する光を反映 ステンドグラス作家・デュルト森本康代さん - 神戸新聞

 神戸の街にはあちこちに、すてきなステンドグラスがある。例えば、須磨海浜水族園や垂水区役所。光の色彩を建築空間にもたらす手の持ち主が、デュルト森本康代(みちよ)さんだ。

 拠点は高校2年から暮らす、神戸西郊の塩屋。外国人の別荘地として洋館が建てられ、海岸段丘の傾斜地に今もいくつかが残る。急な石段をあえぎながら上り、アトリエへ続く木々のトンネルを抜けると、目の前にぱあっと青い海と空が開けた。

 ベルギー留学中に南仏のセザンヌのアトリエを訪れた際、「塩屋ならもっといいアトリエが建てられる」と夢を膨らませた。帰国から半世紀余り、各地の教会・寺院やリゾート施設に個人の住宅と、この地で創作に励んできた。

 今のアトリエは神戸駅前にあった羅紗(らしゃ)問屋の建物。太いはりが黒光りする。中央の大きな作業台も、元々裁ち台だった。仏教学者だったベルギー出身の夫ともども「古いものにすごく愛着があって」、自宅も古民家を移築。「みんな捨てるっていう家なのよね」とおかしそうに笑う。

 市民講座では大体、1年で建物に入れる作品を作るそう。たった1日で、なにか形になるでしょうか?

 ちょっと考え、森本さんいわく。

 50年やってると、きれいなガラスのかけらがいっぱいあって、捨てられない。こういうのを並べてハンダ付けし、小品を作ってみては-。

 これならデザイン画は不要だが、「ちょっとセンスが要るのよね」。色別に分けられたケースの中をあてどなくかき回していると、同系色にして補色を入れるようアドバイス。そこで、緑をベースに赤系を混ぜ、ガラスの形と濃淡でリズムを出そうとするのだけれど、これがなかなか難しい。先生、矩形(くけい)にするのに合うかけらが見つかりません…。

 「ガラスを切ったことは? 慣れたら簡単ですよ」。やってみます。オイルカッターを当てて、線を引いたら、板チョコみたいにパキッと。断面をグラインダーで削り整える。B5判ほどの大きさに並べ終えると「うん、いいんじゃないですか」。ほっと安心し、いよいよ組み上げ。伝統的な鉛線より扱いやすい銅箔(はく)のテープを巻いて、ハンダ付けだ。

 京都の美大では油絵を学んでいた森本さん。「本物が見たい」と留学を決意し、ベルギー政府の奨学金に合格する。また「建築の中で美術を生かしたい」と、訪ねた京都大建築学科では故増田友也教授から「君の絵には光がある」と背中を押された。

 「ステンドグラスって太陽が味方でね」。刻々と変化する光や、季節によって移りゆく景色を反映する。「だから具象的デザインより、色を合わせただけの方がいいと思うの」

 そんな話を聞きながら、隣同士を接着。あぁ、ところどころ隙間ができて、ぴたっと合わないんですが。「大丈夫、ハンダで埋めてしまうとかえって面白いかもしれません」。その一言で味のように見えてくる。

 要所要所で“神の手”が入りながらも、なんとか完成。いつの間にか海へ傾く太陽にかざすと、きらきらときらめく。「家に飾ると、自分で作ったのかと思うくらい、よく見えますよ」。はい、大事にします。

 駅への帰り道、旧グッゲンハイム邸の前で足を止める。個性的な音楽やイベントの場であり、最近は映画「スパイの妻」のロケ地として注目されたこの洋館も、森本さん一家が私財を投じて守ったものだ。

 自分にとって大切なものは何か。教わったのはむしろ、生きる美学のような気がした。(田中真治)

【デュルト・もりもと・みちよ】1943年旧満州(中国東北部)生まれ。京都市立美術大(現市立芸術大)、ベルギー国立建築視覚芸術大卒。兵庫区文化センター、NHK文化センター梅田教室で講座を開いている。

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