2021年05月11日14時11分
中国がアフリカやアジアなどの開発途上国に対し、インフラ整備を中心とした対外援助を拡大させて久しい。その中で、途上国が中国からの多額の融資を返済できなくなる問題が「債務のわな」として指摘されてきた。中国は問題解決に向け動いているが、改善の余地は多い。中国の対外援助政策に詳しい早稲田大学理工学術院の北野尚宏教授に聞いた。
―中国の対外援助の推移は。
政府開発援助(ODA)の定義に基づいて算出した中国の対外援助の推計額は、2001年ごろから増加傾向が続いてきた。近年だと15年に51億ドル、18年が59億ドル、19年は横ばいだ。対外援助は2国間援助(無償援助や無利子借款、優遇借款など)と多国間援助(国際機関への出資金、拠出金)から成るが、15年から多国間援助の比率が大幅に増えた。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対する資本金払い込みが19年まで続いたことによる。16年から無償援助が伸びているのも特徴だ。
―対外援助額でランク付けすると。
19年で、米国、ドイツ、英国、フランス、日本、トルコに次ぐ7位だ。
―途上国の債務問題の現状は。
2000年代初めに重債務貧困国の問題が深刻化した際、中国は途上国側に立って先進国や国際機関に債務の減免を求めるとともに、自らも03年、途上国に対する無利子借款の債務減免を始めた。減免の累計額は18年時点で、貸出累計額の約3割に上る。
―中国としても対応を進めていると。
無利子借款についてはそうだ。一方で、中国輸出入銀行や中国開発銀行を通じた融資については別だ。これらの銀行を通じた融資で近年、低所得国の中国への債務は急増した。開銀については実態として政策金融機関であるにもかかわらず、中国は民間商業銀行だと主張している。融資に関連した情報開示も不十分だ。透明性向上などの点で改善の余地は大いにある。
―対外政策に関し、第14次5カ年計画(21~25年)から読み取れることは。
巨大経済圏構想「一帯一路」で「質の高い発展促進」を掲げ、グリーン、開放、清廉を堅持するとうたっている。中国は国内で汚職撲滅に力を入れているが、途上国に対しても「中国企業は汚職はしない」ということだろう。また、ハードに加えてソフト面での援助により力を入れていくのだという印象を受けた。単にインフラをつくるだけではないということを強調しているように思える。
◇北野尚宏氏略歴
北野 尚宏氏(きたの・なおひろ)83年早大理工学部卒。97年米コーネル大大学院博士課程修了。海外経済協力基金の北京駐在員などを経て08年国際協力銀行開発第2部部長、同年国際協力機構(JICA)東・中央アジア部部長、16年JICA研究所所長を経て18年早大理工学術院教授。 ![]()
途上国債務問題、改善の余地 中国「一帯一路」に変化―専門家 - 時事通信ニュース
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