2021年05月01日07時05分
お茶業界の勢力図の変化が話題になっている。産出額で万年2位に甘んじてきた鹿児島県が、「王国」静岡県を抜き、初の首位に立ったのだ。1日は、立春から八十八夜を数える「緑茶の日」。自粛ムードが続く中、一服いかが?
茶業界で静岡県の存在感は圧倒的だ。農林水産省の統計では、確認できる1967年以降、産出額トップを独走。746億円を記録した80年には2位の鹿児島を5倍以上引き離していた。
しかし、高級茶の需要低下などを背景に低落傾向が続き、今年3月に発表された2019年の統計で静岡県は251億円。252億円の鹿児島県に逆転を許した。鹿児島県農産園芸課の担当者は「大型機械導入に適した平たんな地形が多く、生産規模の拡大につながった」と理由を分析。静岡県お茶振興課は「消費者の生活スタイルが変化し、高級茶が売れなくなった」と指摘する。
「励みになる」。喜ぶ鹿児島県だが、悩みも抱える。トップブランド「知覧茶」ですら「全国的には県産と認知されていない」と知名度の低さを嘆く担当者。今後、県産茶を使ったスイーツ開発などPRに力を入れる方針で、「『茶と言えば鹿児島もある』と言ってもらえるようにしたい」と気を引き締める。
一方、静岡県は冷静に受け止める。根底にあるのは、不動のブランド力や知名度。同県の茶商工業協同組合によると、県内には17カ所の名産地があり、地形や気候に応じた多様な茶葉の栽培が品質の高さを支えている。茶農家植田孝謙さん(41)は「順位など気にせず、『静岡といえばお茶』のイメージを守っていきたい」と力を込める。
ただ、ペットボトル茶の普及などで、主力としてきた高品質な茶葉の市場価格は下落が続く。県は、生産者と国内外の流通関係者のマッチング支援サイトを開設。パリの日本人パティシエに、静岡県経済農業協同組合連合会が開発した抹茶ペーストを使ったレシピを考案してもらうなど、販路開拓を支援している。
市場の縮小は業界全体の課題で、需要喚起に向けた知恵が求められるのは両県に共通している。新茶の収穫時期を迎える中、鹿児島県最大の生産地、南九州市の担当者は「静岡と手を組み、業界を盛り上げていければ」と話している。
茶産出額で勢力図に変化 鹿児島、初めて静岡を逆転―念願の首位も悩みは知名度 - 時事通信ニュース
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